2025年8月20日水曜日

Luxman SQ-38FD 悪友からの修復依頼


 1973年製造 ラックス 真空管プリメインアンプ SQ-38FD を所有している悪友Bからの故障修理依頼です。

Luxman SQ-38FD 詳しい記載内容については14年前となりますが 次項目の2011年8月に投稿したものを参照ください。

骨董的な真空管アンプシステムを愛用している 無銭庵 仙人 と申します。くだらないブログですが骨董的な真空管アンプの修理過程と判断ください。時々本題とは異なる脱線する記載事項も発生しますが 愛嬌程度との過去録記載と判断ください。

片チャンネルからの音が出ないとの連絡があり 悪友Bの自宅の道楽部屋に訪問しました。悪友Bの道楽部屋は多数台の自作パソコンに埋もれた環境です。その部屋に問題の SQ-38FD が鎮座しており Selestion Ditton 25 セレッションのスビカーも同様に鎮座していました。やはりLチャンネルから音が出ません。アンプセレクター・スピーカーセレクターも工作され活用されていました。再生音源はPCからの音源がメインのようです。故障したアンプは15年以上前に小生が改修しています。故障確率の高い有名な出力トランス OY-15-5 が両チャンネルご臨終でした。ISO製 FE25-5 に両チャンネル交換して現在に至ります。その時カップリングコンデンサーのオイルコンはMFコンデンサーにほとんど交換してあります。購入後50年以上経過している真空管式プリメインアンプです。悪友Bの道楽部屋では分解点検できる場所ではないため 小生の隠れ山小屋に持ち帰りました。



早速隠れ山小屋に持ち帰り故障状況の確認作業です。本体木製ケースは取り外す前に故障状況の点検です。電源スイッチ以外は可動ていません。まずは現在使用していた AUX-2 に音源を接続しスピーカー端子は山小屋の常備品平面バッフルのスピーカーに接続しましたがやはり方チャンネル音が出ません。この故障した真空管式プリメインアンプはプリアンプとメインアンプは切り離しが可能であるため 後部パネルにあるメインアンプ入力端子に音源を接続すると正常に動作します。プリアンプ部と判断しました。入力セレクターをガチャガチャ回して連続回転すると音が両チャンネル出るようになりました。悪友B はほとんど入力切替ロータリースイッチは AUX-2以外使用頻度は無いようです。


入力セレクター部のロータリースィッチです。クロストーク改善のため多数段のロータリーウエハー構造です。接点部はやり黒化しています。接点部には信越製シリコングリスを塗布して修復しました。これだけの故障かなと思いましたが 音量を上げると左チャンネルと右チャンネルでは音質差が判明。まずは以前調整してあったDCバランス・アイドリング電流の点検です。各真空管 48~50mA に調整てありました。左チャンネルの片側の真空管が正常な電圧が発生していません。以前改修時新規取り付けた 10Ω の抵抗の電圧が通常 0.5V であるべき電圧が数十ボルトの表示です。山小屋の測定器は自宅道楽部屋と同じ機種であるアナログ回路計 横河 YEW3201 型が常備品です。



画像中央部に10Ωの抵抗をよく見てください。左側の抵抗器の色が変色していますね。テスターで計測すると断線状態です。テスターの内部抵抗で異常な電圧が発生したわけです。山小屋で部品物色すると10Ω1/2W誤差1%の精密抵抗があり交換して動作試験をしましたが 正常な電流が流れません。極端な真空管エミゲン状態です。

故障原因として真空管の内部短絡事故で異常電流が流れ カソード抵抗であり電流測定抵抗の10Ωに発熱が発生  抵抗器の断線と判断しました。多分故障時には真空管が赤熱状態であったと思います。異常電流の原因としてグリッドに接続してあるカップリングコンデンサーのリークも考えられますが 以前出力トランスを交換時にMF型コンデンサーに交換してあります。動作時のグリッド電圧も点検しましたがコンデンサーのリーク状態は確認できませんでした。簡単なリーク電流測定方法としては電源通電時数秒間は真空管が動作していないため各回路はオープン状態であり真空管には電流は流れません。出力管のグリッドにはバイアス電圧のみの負電圧が発生しています。もしもカップリングコンデンサーがリーク(漏電)時はグリッドバイアスが正電圧に移行します。プラス側に移行すればプレート(カソード)電流は増加します。あくまでも目安的な方法です。通電直後であればカップリングコンデンサーの印可直流電圧を測定するとDC:400V 以上発生していますね。ゆえに0.1μF DC:400WV  では耐圧不足であるのが判明します。DC:630WVを選択しなければなりませんね。

仕方なく山小屋ではこれ以上の修理・調整はできません。自宅道楽部屋に持ち帰りです。



自宅道楽部屋では自作真空管試験機  久々の登場です。この工作した真空管試験装置は 自己バイアス・三極管もしくは三極管接続モノラル真空管アンプそのものです。カソード抵抗を可変して適正電流値でのプレート電圧・グリッド電圧・カソード電圧・カソード電流を同時測定できる 三極管・三極管接続管のA級・もしくはAB1級動作状態が確認できる装置です。音楽などを入力すればスピーカーから音質が確認できる多用途測定器です。現在 50C-A10 の動作試験状態です。50C-A10 はヒーター電圧50Vであるため手前の真空管はヒーターのみダミー抵抗として使用し AC:100V で通電します。測定する真空管は奥側です。この装置で最低測定する端子電圧は Ek:カソード電圧 Ik:カソード電流 Eg:グリッド電圧 Ep:プレート電圧 Esg:スクリーン電圧 B1:電圧 を測定し真空管の良否を判定します。測定端子は全面右側のUSソケットが測定端子です。画像中央下側はPCMデジタルステレオレコーダーであり機器動作音源として作動します。シャーシー上部の 50C-A10 左側にあるつまみが 心臓部 大型2KΩ巻き線型可変抵抗器であり これがカソードバイアス用可変抵抗器です。

この自作 真空管試験装置について詳しくは https://musenan05.blogspot.com/ を参照ください。

今回 50C-A10 三極管の動作試験ですので 測定値としては SQ-38FD のグリッドバイアス電圧と同じとし カソード電流は 48mA となるように可変抵抗器を調整します。カソードのバイパスコンデンサー100μF/200WV はスイッチONとします。プレート供給電圧 DC:400V 前後となるように電源部で調整します。電源トランス山水 P-42B 高圧巻き線は 280Vタップから 350Vタップへとリレー制御で変更。チョークコイル 5H-200mA C520 に直列に入っている抵抗器 1.1KΩはスィッチにより短絡として高電圧供給とします。又整流管は高能率(ハイパービアンス管) 5A-R4 を選択します。これらの設定でB電圧は DC:430V 程度供給できます。カソード抵抗である 2KΩ可変抵抗器は抵抗器最大値から目的とする電流値 48mAとなるように可変しその状態の各部電圧を測定します。場合により可変抵抗器には並列に666Ωの固定抵抗器をスイッチ操作により並列接続する事もあります。又デジタルステレオICレコーダーの音源により動作状況を道楽部屋常用スピーカー8Ωの Lch,Rch 直列接続とし真空管試験装置16Ω端子に接続します。モノラルとなりますが両スピーカーから音出しで音質確認できます。

真空管測定準備として アンプに実装されている出力真空管4本に検体表示として真空管にフェルトペンで識別記号を記入します。当方は A,B,C.D  と記入し識別します。真空管試験装置測定準備でき次第  Ik:カソード電流可変し 今回修復する SQ-38FD のアイドリング電流値  48mA を設定値として真空管個別動作を観測し良否判定します。悪友Bは購入後一度も出力真空管は交換していません。使用頻度が少なく小生とは運用時間の差だと思います。


測定結果

検体A Ep:435V    Eg:GND, 0V    Ek:39.8V     Ik:48mA    Ep-k:395.2V     Rk:829Ω   

検体B Ep:440V    Eg:GND, 0V    Ek:21.8V     Ik:40mA    Ep-k:418.2V     Rk:545Ω      

検体C Ep:434V    Eg:GND, 0V    Ek:38.9V     Ik:48mA    Ep-k:395.1V     Rk:810Ω

検体D Ep:433V    Eg:GND, 0V    Ek:40.0V     Ik:48mA    Ep-k:395.6V     Rk:833Ω


手持管  Ep:436V    Eg:GND, 0V    Ek:32.0V     Ik:48mA    Ep-k:404.0V     Rk:666Ω

備考 (単位および説明) 

この項目の電圧を重視します。 Ek:表記電圧 は グリッドから見れば負電圧であるグリッドバイアス電圧となります。

Ep:プレート電圧:V    Eg:グリッド電圧: 0V(GND)    Ek:カソード電圧:V     Ik:カソード電流測定時固定48mA    Ep-k:プレート・カソード間電圧:V     Rk:カソード抵抗値(計算値):Ω 

実働する SQ-38FD  Ep-k電圧はDC:410~430V程度ですが ほとんど同等動作状況での測定と言えます。

(この真空管試験装置はカソードバイアス動作であり グリッドは直流的にグリッド抵抗によりグランドレベルとなっています。グリッド・GND間は 100KΩ の抵抗器です。)

上記測定結果から判明することは アイドリング電流各真空管が 48mA とした場合 Ek: 電圧がグリッドバイアス電圧と同じであり 固定バイアスのアンプではバイアス電圧は負電圧です。真空管のカソードがグランドレベルであるので 0V です。バイアス電圧はカソードを基準とするとマイナスの電圧が C電圧 として負のグリッドバイアス電圧で真空管動作点の設定調整項目です。SQ-38FD のバイアス回路は固定バイアス方式です。ゆえに出力管のカソードは GND に接続されています。新規にカソードには電流測定用途として 10Ω が挿入されていますが 無視できる数値です。

SQ-38FD メインアンプ調整において上記真空管の調査結果から Ek の電圧がそろっている場合 DCバランスVRはほぼ中心付近になります。又グリッドの電圧を測定すれば Ekの電圧を負電圧として測定でき電圧は大きく変化しません。

上記真空管試験装置の測定結果により 検体B正常時のバイアス電圧では設定された電流が流れません。これが真空管のエミゲン状態です。無理に設定電流とするにはカソード・グリッド間の電圧(バイアス電圧)を小さくしなければ電流は流れません。

検体A, 検体C,検体D, の真空管はバイアス電圧差がほとんどありません。ばらつきが少ない真空管で正常管と判断できます。又検体手持ち管は エミゲンが進行しており DCバランスがとりにくい真空管と言えます。ペアチューブ・選別管と言われる真空管はこのように特性の近い真空管を選別しているわけです。LUXではやはり完成品として出荷されるアンプでは 出力管4本とも特性のそろったものが搭載されていたと思われます。

 元々 50C-A10 の真空管はばらつきが多く 特製のそろった真空管を入手には今となっては困難となっています。現在では新品の真空管はほとんど入手できません。多数の中古管から選別しなければ最良のアンプとはなりませんね。これが骨董品真空管アンプ修復における実態です。



上図は以前出力トランス不良時 ISO(新タンゴ) FE25-5 に交換。その時に新設したカソード電流測定用抵抗器4本です。カソードに流れる電流により抵抗器に電圧が発生します。発生した電圧を電流換算して測定します。例えると 10Ω の抵抗に 0.5V が発生した場合 オームの法則により I=E/R から0.5/10=0.05(A) すなわち 50mA となります。純正の出力トランス OY15-5 の場合は DCバランス・アイドリング電流調整時にはトランスの一次巻き線抵抗値(P1-B1間, P2-B2間 約160Ω)を応用しての調整です。しかし異機種出力トランスでは一次巻き線抵抗が異なるためLUX推奨の方法では調整できません。そのためカソード電流測定用として新規取り付けた抵抗器です。左側から4本は依然取り付けていた10Ω誤差±5%1W型酸化金属皮膜抵抗器です。右端は今回使用した10Ω誤差±1%1/2W型金属皮膜精密抵抗器です。右から2本目の抵抗器が変色しているのが判明します。現在断線状態です。この抵抗器に過大電流が流れ焼損断線したと思います。目視で異常状態が判明したわけです。現代ではこのような抵抗器はほとんど使われていません。半導体回路部品において IC・トランジスター が主流であり消費電力も少ないためチップ抵抗器が多数使われています。一般的に数多く存在する抵抗器は炭素皮膜抵抗器です。カーボン抵抗器とも呼ばれます。新たな抵抗器選択には許容電力と誤差に注目してください。代用使用する場合には注意が必要です。50年以上前の部品とは大きさも大きく異なります。真空管式白黒テレビ時代には 1/2W型 ソリッド抵抗が主流でした。


上図は道楽部屋 小物部品整理棚に保管している旧機種に使用された時代の各種抵抗器です。左側は炭素皮膜抵抗器 L型,P型であり2W,1W,1/2W型です。中央上部は巻き線抵抗器5W型、その下は酸化金属皮膜抵抗器 7W,4W,3W,2W型です。右上はソリッド抵抗器2W型、1W型、1/2W型、銀色の帯が目立つ3本が昔よく使われたソリッド抵抗器で雑音が多く抵抗値高化を招く抵抗器です。右下は現在でも簡単に入手できる 1/4W・P型誤差±5%の汎用カーボン抵抗器(炭素皮膜抵抗器)です。ほとんど半世紀前後に製造された抵抗器ばかりです。

抵抗器の許容電力値が1W型の場合 例として今回使っていた10Ωの場合で考えます。電力値とは 電流・電圧・抵抗で表示した場合オームの法則から W=I・E I=E/R   E=I・R  より展開しますと 1Wの場合 抵抗値10Ωであればこの抵抗に流せる電流 I(A) を求めると

W=I・E   (左式 Eに E=I・R を代入すると )    W=I(A)・I(A)・R(Ω)      1(W)=I(A)・I(A)・10(Ω)  I(A)・I(A)=1/10 I(A)=√0.1    計算結果電流 I (A) は 0.316(A)    316mA となりますね。10Ωに 316mA 流れると抵抗に1(W)の電力が発生します。 また不明であった E(V) は E=I・E より 3.16V となります。

今回修復に使用した10Ω誤差±1%1/2W型金属皮膜精密抵抗器での許容電流値として0.223(A) 223mAですね。通常アイドリング電流値および最大出力時の電流を考えても安全動作範囲と言えます。1/4W型抵抗器であれば 158mA です。50C-A10 1本の最大カソード電流約100mA 程度でも問題はないようです。抵抗器は発熱により抵抗値の変化が発生します。余裕を見た電力値を選択しなければなりません。 ゆえに今回使用した抵抗は 10Ω 誤差±1%1/2W型金属皮膜精密抵抗   茶 黒 黒 金 茶 (カラーコード) を採用しました。



各部不良個所修復後の DCバランス・アイドリング電流調整

今回不良個所の部品交換として 予備の真空管 50C-A10 LUXMAN表示 多分中国製と思われる真空管との1本のみ交換。カソード抵抗器4本交換。DCバランス調整用半固定VR 5KΩから10KΩ SVRに変更交換。上記がその調整中の作業画像です。調整に使用した測定器は SQ-38FD とほぼ同年代の骨董品アナログ回路計 横河YEW3201型で調整します。現代のデジタルマルチメーターではありません。こだわりです。片チャンネルごと調整します。通電後しばらくは不安定な数値を表示しますが時間経過とともに数値は安定していきます。最低30分以上経過した状態でないと調整は完了しません。音楽を流しながらの調整です。出力電力として1W以下の出力しかありません。やはり特性のそろった真空管でのプッシュプル回路ではDCバランス調整SVRはほぼ中点で動作となります。左側の回路計はDC:0.3Vレンジで各カソード間の電圧を測定します。0V表示となれば各真空管に流れる電流は同じとなります。右側の回路計は DC:1.2V レンジで 10Ωの抵抗器電圧を測定します。調整電圧は 0.48V~0.5V に調整すれば完了です。その後一時間以上エージングしましたか調整後の電圧変化はほとんど発生しませんでした。

予備真空管を使用して調整した結果 片チャンネルでは DCバランスおよび バイアス電圧には大きな違いが発生しました。特性の異なる予備真空管を使用したため完璧なDCバランスが取れませんが仕方ありません。一応真空管4本ともカソード電流は 48mA に調整完了。DCバランスVR 中央付近ではなく偏った位置で調整完了しました。正常な片chは真空管のバランスがとれているためDCバランスVRほぼ中央です。両chとも調整範囲拡大のためDCバランス調整用VRは5KΩから10KΩに変更。大出力時特性はよくありませんが実用動作アンプと判断しました。悪友Bにはこのままで返却予定です。次回山小屋に行ったとき悪友の道楽部屋に納品です。返却時 50C-A10 の新規購入検討をお願いする予定です。代替アンプとして山小屋で遊休となっている  6CK4 p-p リークムラード型三極管アンプを持ち込み代替品として貸し出しました。修復完了した SQ-38FD 納品時に引き上げ予定。

悪友Bの道楽部屋に修復品SQ-38FD を納品。修理代金として茶封筒を渡されましたが 高校時代からの悪友であり受け取りを辞退しました。自宅道楽部屋の余剰部品で修復したため 今回の修復での実費用は発生していません。後日昼飯でもおごってもらうことで納品完了となりました。50C-A10  の中古管購入も即しましたが フルパワー大音量運用とは異なり通常1~2W程度までの出力運用でありリスニング結果 現状で使うとのことでした。

実際これと同等品である保有品 LUXKIT KMQ-60 で昔100人前後収容できる中ホール運用での音楽鑑賞イベントでは フルパワー近くまで音量を上げましたが十分な音圧が得られました。通常一般的な日本家屋内ではよほど能率の悪い80dB前後のスピーカーでない限りパワーは出せないと思います。スピーカーの能率が90dB を超えれば2~3W出力でも十分運用可能と思います。

修復完了後の物理的特性検査についての詳細は 本編を参照願います。


まとめ


上図は今回故障で交換した部品

悪友Bの SQ-38FD 修復作業での問題点として記述すると

まずは電力増幅真空管 50C-A10 の調達です。入手方法として一番早いのはヤフオクでの入手と思います。ほとんどの場合2本組もしくは4本組で出品されています。新品長期保管品(デッドストック品)などはほとんど見かけません。廃棄寸前の機器抜き取り管がほとんどと思います。使用状態により全数が正常動作する真空管とは思えません。中には外見は良好ではあるがエミゲン状態も含まれておる可能性もあります。また購入後正常に動作する真空管であるかを確認しなければなりません。各真空管の動作状況を記載され出品されている真空管はほとんどありません。一本当たりの単価を計算すると最低 6~8000円程度となります。それに諸費用を加算すると結構高額となります。購入に際し正常に動作するかは保証はありません。

多数台 50C-A10 を使用した真空管アンプを所有もしくは修復してきましたが 電力増幅真空管の良否判定に苦労しました。アメリカ軍用規格  TV7D/U・DELICA 1001型など真空管試験機では コンパクトロン12ピン管 50C-A10 は簡単に測定する真空管ソケットが装着されていません。又測定チャートも存在しません。その意味もあり実働状態を確認できる真空管試験装置を工作に至るわけです。

又今回修復した Luxman SQ-38FD 型は 50C-A10 AB1級プッシュプル回路で動作しており 強度のNFB が施された真空管アンプです。数ワットの出力で動作している場合 A級プッシュプル回路として動作しています。だから音質の良いA級プッシュプル回路動作と言えます。片側の真空管がエミゲンしても不良と判別できないのは終段管が小電力出力時A級増幅器で動作であるため大電力出力時に不良と判別できるからです。今回修復した SQ-38FD は音質には定評あり 高級真空管アンプに属すると思います。真空管は全数三極管で構成されています。現実には疑似三極管も存在します。メインアンプの初段管は 6267 /EF86  三極管接続の五極管です。終段管の 50C-A10 の電極構造をよく観察すれば 多極管の三極管接続構造です。見た目には4極ビーム管構造であり 第3(サプレッサー)グリッド相当のビーム形成翼(極)も存在します。スクリーングリッド支柱には放熱翼も観られます。スクリーングリッドはプレートと接続されています。 WE-300B , RCA-2A3,RCA-45,RCA-50,UV211(VT-4C)などの真空管で陰極がフィラメント仕様古典直熱三極管と呼ばれます。 RCA-3C33, 6CK4,WE-421A,6G-A4,6BX7などの陰極がカソード仕様傍熱管に分類され純粋な三極管です。50C-A10 は三極管接続の多極管構造であり 純粋な三極管とは思えませんが三極管に分類されます。



上図はメインアンプ部に搭載されている NEC 6267/EF86 真空管です。黄色の箱は高信頼管選別管です。ガラス管壁に黄色でプリントされています。右側は通常市販品の NEC 6267/EF86 真空管です。この真空管がメインアンプ部の初段管であり五極管ですが三極管接続として採用されています。外側の灰色の電極はプレートではありません。シールド板です。そのため微小な信号増幅でもシールドケースは不要です。黄色の箱には一本づつ検査済証が添付されます。検査済証には検査日と担当者スタンプが押されています。松下製の 6267 はシールドがメッシュ板状となっており海外製 6267 も同様の構造です。現在保守管として道楽部屋部品棚に保管中です。以前は複数本の 50C-A10 を所有していましたが SQ-38FD C号機に4本使ったため保管品の 50C-A10 は一本しか保管しておらず 悪友Bの修復に使用したため現在 50C-A10 は在庫 0本 となってしまいました。これからの保守を考えると頭が痛い状態です。

特に諸先輩方の中には 終段管のアイドリング電流を絞る調整を見かけます。アイドリング電流を規定値より少なくする場合 真空管の延命のためではないかとの気配がします。しかし真空管の動作点が変化します。AB1級であれば最大出力時でもグリッド電流は流れない動作点になりますが アイドリング電流を絞りB級増幅器に近づくAB2級動作に移行してしまい音質に関係します。B級増幅回路に近づけば゛コントロールグリッドにグリッド電流が流れる領域の動作点に移行します。パワードライブで出力は増大しますが 歪も増加します。半導体アンプでも音質を追求した場合 常時発熱は多いが大きな電力が得られないA級プッシュプル増幅アンプも存在します。WE-300B で有名なウエスタンエレクトリックのアンプWE86 300Bp-p A級プッシュプルでも最大出力は15Wしかありません。WE91b WE300B シングルA級増幅で最大出力8Wです。A級プッシュプルではA級シングルのほぼ2倍しか電力は得られません。中にはWE-300B A級パラレル・シングル増幅器で 15W の出力方式もあります。できうる限り設計値である初期性能を維持するように調整するように心がけています。


出力管の DCバランス・アイドリング電流調整とは


上図は今回説明用として作成した図面です。FIG- 1はSQ-38FD の出力トランスの構造図です。一次巻き線は B1,B2 端子から出力三極管のプレート P1,P2 に接続されます。巻き線方向を図で示しています。FIG-2 はアンペアの右ねじ法則の図であり磁芯に巻かれたコイルに電流が流れた場合には左にはN極 右側にはS極が発生します。プッシュプルトランスの場合 P1,P2 に同じ電流が流れた場合磁界は打ち消され発生しません。FIG-3 はA級シングルアンプ カソードバイアス回路の構造図です。プレート電流によりコアは帯磁することになります。Pはプライマリー巻き線・一次巻き線です。Sはセカンダリー巻き線・二次巻き線でスピーカーと接続する端子です。OY15-5 出力トランスのコア材はオリエントコアです。コア形状はE,I型が交互多段に積層されています。一次巻き線(17分割)・二次巻き線(8分割)は多段層(25段)に巻かれています。電源トランスのような簡単な巻き線構造ではありません。出力トランス OY15-5 についての詳細は https://musenan.blogspot.com/ を参照願います。

今回修復した Luxman SQ-38FD においては必ず調整しなければならない項目です。真空管アンプでは三極管プッシュプル回路での大出力アンプになります。多極管・ウルトラリニア回路では結構な大出力アンプも存在しますが 三極管は直線性・リニアリティーが良好であり音質的・歪率にも優れた回路構成です。最良の動作とするための調整です。真空管という古典的なデバイスでは特性に必ずばらつきが発生します。真空管を最適に動作させるための調整項目です。

DCバランス調整

プッシュプル回路では片チャンネル最低2本の真空管を使います。(単管双三極管等を除く RCA 3C33p-p,WE421Ap-pなど) 真空管一本のシングル増幅アンプにはこの調整項目はありません。各真空管で増幅された信号は位相逆転しています。その信号を出力トランスという変圧器で合成され 二次巻き線に低いインピーダンス変換して出力されます。各真空管はもともとばらつきがありこの真空管に流れる電流を同じ電流値にするのが DCバランス調整です。ゆえに特性のそろった真空管が必要なわけです。

すこし脱線します。

例として下図は一つのガラス容器に真空管が2組のユニットが搭載された真空管です。一般的にはオーディオ用途の電力出力真空管としては見かけませんね。傍熱管仕様 2A3 が2組入っているような真空管とご理解ください。


RCA 3C33p-p 単管双三極管ステレオアンプ 常用システムに組み込み

上図は現有システムの一部です。特殊形状の真空管であり 足の数は7本です。三極管2組ですので 通常電極数としては P,GK, 2組とヒーター1組となれば足の数は8本必要です。 6SN7GT 双三極管オクタルベースで足は8本です。3C33 は7本であり1本足りませんね。そこでこの真空管は両極のカソードが共通として取り出されています。これがプッシュプル回路とした場合 各カソードに DCバランス・アイドリング電流調整用の抵抗器を取り付けられません。これを克服するためには 出力トランスの一次巻き線 B1,B2,端子に挿入しました。出力トランスによりB1,B2,が共通端子として取り出されている場合は抵抗器は挿入できませんね。このアンプに使用した出力トランスはB端子が独立していたため抵抗器を挿入することができました。ただ+B電源がかかっている抵抗器での測定には感電の注意が必要ですね。この真空管は軍用管でありパルス増幅管です。この真空管によく似た形状の真空管は 829B, 832A,  双ビーム出力管でVHF帯域の電力増幅管です。上部にはプレートの角が2本取り出されています。



左より RCA 829B, RCA 832A, RCA 3C33   軍用通信管

上図は RCA 製軍用通信管です。また JAN 球とも呼ばれます。国内では名称が異なります。RCA 829B は2B29, RCA 832A は 2B32 と思います。国内の通信管はこのように 2B から始まる名称ですね。2B33 はUY-807A と思います。ST16 型ではなくスリムなGT スタイルです。若いころ UY-807A 錨マークである海軍マーク入りの真空管を所有していましたが実家では茄子管をはじめ多数の真空管は帰郷したときには箱ごと処分されてました。管壁には 川西真空管 であったような記憶です。のちの TEN 神戸工業です。現在所有はしていません。ソケットベースはタイト製でした。

脱線してしまいました。元の話に戻します。

アイドリング電流調整

真空管動作点の調整です。この回路では AB1級で動作します。シングルアンプでは動作は A級動作ですのでほとんどのシングルアンプでは 最大プレート損失(Pd)における電流と電圧を掛け算した値です。例として 2A3 の場合プレート損失(Pd)は 15W です。プレート・カソード間電圧が250Vの場合 プレート電流=フィラメント(カソード)電流は 60mA です。入力電力値は電圧×電流により 15Wと計算でき これがアイドリング電流値(カソード電流=プレート電流)です。SQ-38FDでは AB1級増幅回路ですので A級増幅とB級増幅の中間で動作します。50C-A10のプレート損失(Pd)は 30W です。もしもプレートカソード間の電圧が 420Vとした場合真空管に流れる電流の最大値は 71.4mAです。NEC真空管規格表によると A級増幅器の場合にはプレート・カソード管電圧は 250Vで設計した場合 Rl:1500Ω  Rk:200Ω 出力電力5.5W,THD7% 無信号最大電流値は90mAです。入力電力は 22.5Wとなります。プレート損失 30Wと比較すると余裕があります。

このアンプではプレート・カソード間電圧 420V程度であり  AB1級増幅とする場合  NEC真空管規格表Ep-k400Vでのバイアス電流は 50mAと記載されており 最大出力は 34W,THD2.5% Rl:5000Ω と記載されています。又グリッドバイアス電圧は -43V と記載されていますので参考となりますね。最大プレート印可電圧は 450V です。アイドリング時の一本当たり真空管入力電力を計算すると 21WでありPd:30Wのプレート損失と比較すると余裕があります。ゆえにプッシュプル回路の各真空管を同じアイドリング電流値に調整しなければなりません。そのためにアイドリング電流調整用のVRと DCバランス調整用VRを各チャンネル交互にしかも時間をかけて調整する必要があります。

なぜアイドリング状態の出力管プレート損失に注目するのかは 無信号時真空管で発生する熱量が大きいからです。出力が大きくなれば電流も増えますが 出力としてエネルギーはスピーカーへと送り出されるため真空管内部での発熱量は大きくは増加しません。とはいえ最大出力時出力管がうっすら赤熱するアンプも存在します。A級シングル増幅器の場合 出力が増加しても電流は大きく変化しません。そのためアイドリング時が真空管が一番発熱するわけです。SQ-38FD の場合 スピーカーへの出力が数Wで運用時はA級動作範囲であり 真空管を流れる電流増加は少ない領域です。50C-A10 4本がアイドリング状態(21W×4)では真空管ヒーター加熱電力(8.75W×4)も加算すると 終段管全体からの発熱量は120Wを超えます。そのため本体からの放熱に配慮する必要があります。真空管は元々真空状態です。熱は伝道しませんが内部で発生した熱量は輻射熱として 真空管壁および周辺に拡散します。

出力トランスには常時アイドリング電流が流れており トランス一次側巻き線位相が逆のため同電流であれはトランスのコアは直流電流による磁化が発生しません。そのため高級なトランスほどアンバランス電流値は小さく設定されています。アンバランス電流が大きくなると最大出力及び歪特性が劣化します。

アイドリング電流を少なくするほど B級増幅器に移行します。アイドリング電流値が 30mA以下に調整した場合 B級増幅に近い AB2級増幅回路動作と思います。


無銭庵仙人の独り言


工作した真空管試験装置を使ってのお遊び

このブログを閲覧されている方々は真空管に興味があると思います。真空管のどのような容姿が好みでしょうか。小生は幼い時に自宅にあった6球スーパーラジオ電蓄です。ST-14型容姿の真空管が好みでした。スビーカーは 8インチ励磁型ダイナミックスピーカーです。励磁コイルの抵抗値は2500Ωです。スピーカー背面には出力トランスが搭載されており 本体とはUYプラグ・ソケットで接続されています。キャビネットの裏側からダルマ型の真空管にくぎ付けです。80の2本のフィラメントの薄暗い燈火 42のヒーターの薄暗い燈火が記憶にあります。78回転の電蓄ダイレクトモーター仕様でした。この電蓄ラジオが小生の趣味に陥った始まりです。残念ながらこの電蓄は学生時代に解体して送信機を工作しました。いまだに50年以上経過した真空管オーディオシステムを愛用している 無銭庵 仙人 です。



上記は MINIWATT DARIO R120 単管三極管 A級シングル増幅器の実験での動作点と音質点検動作状況確認試験です。フランス製の真空管です。目視すると4極管の3極管接続構造です。2A3同等管として購入。2A3とは異なりフィラメント構造ではなく傍熱管(ヒーター)構造です。シングル動作でも 2A3 とは異なりヒーターハムに悩まされません。2A3 と変更した場合 Rkは 750Ωから600Ωに変更しなければなりません。

R120   最大定格 Ep:300V    Esg:***V    P d:15W    Psg d:**W    Ik:***mA    Hv:6.3V     Hi:1.45A

A級シングル増幅器動作状況 Ep-k:285V    Ik:59.5mA    Ek:22.9V    Pd:17.1W  もう少しEp-k を 250V としなければプレート損失15Wを超えてしまします。短時間での測定としました。


右から 東芝 6A-S7G (ST-16)   RCA 2A3 (ST-16)   DARIO R120
 

余談

昔 2A3シングルアンプを複数台工作しましたが 交流点火では夜間のリスニングには不向きでした。直熱管でありフィラメントからの残留ハムに悩み アンプは解体してしまいました。ハムバランサー回路でも問題は解決しません。直流点火にはこの真空管のフィラメント電圧・電流(2.5V,2.5A)がトランス巻き線状態および回路的問題が大きくしています。ストレージ蓄電池からの直流点火するにも動作環境に多くの問題があります。

左から Western Electric 421A(ST-16),    TANGSOL 5998(ST-16),  GE 5998A(T12-15)

その後2A3 と同等に使用できる海外製真空管が存在することが判明し その真空管が R120 です。多数人があこがれる 2A3シングルアンプは世間では最良のアンプとして推奨されますが このような問題が潜んでいることを理解したうえで工作又は完成品を購入してください。現在2A3シングルアンプに使用していた出力トランス LUX SS5B2.5型は WE421A (双三極管 TANGSOL5998互換)単管シングル増幅アンプとして常用システムの一部として稼働しています。今回使用している工作した真空管試験機には予備品として購入した LUX SS5B2.5型を使用しています。もともと WE421A はレギュレーター管として設計されています。有名な WE300B ですらアメリカ軍用機器でレギュレーター管として使われています。同等管の TANGSOL5998 ですが GE5998A は全く異なる電極構造であり真空管特性は同等品ですが この真空管を使った場合時々電極からの大きなスパークノイズに悩まされ怖くて使えません。


左  RCA 2A3,  右  国産 TEN 2A3

上図は有名な直熱三極管のフィラメント支持構造違いです。RCA 2A3 は上部のマイカシートに直接取り付けられています。まるで整流管 UX- 80(5Y3GT) のようなフィラメント構造ですね。GE製も RCA 製も同じフィラメント支持構造です。片や国産 TEN,マツダ製 2A3 の場合フィラメントは RCA に比べ細く点灯時でも薄暗く点灯します。マイカ板直接に取り付けとは異なりWE300B と同じコイルスプリング4本でフィラメントを吊り下げられています。所有している 2A3 は2分割プレート構造であり 300B のような一枚プレート構造ではありません。所有している elector-harmonix 2A3 GOLD 4本は一枚プレート構造です。この真空管を使った 2A3p-pアンプは工作しましたが現在お飾りでありほとんど運用していません。 

左から 東芝 6A-S7G(ST-16),  東芝 6080(T12-43),  GE 5998A(T12-15)

上図は双三極管構造のシリーズレギュレーター管です。以前6080の24V管 RCA  6082を使ったA級増幅アンプを工作しましたが気に食わず解体となりました。カソードバイアスでカソード抵抗が2.5KΩ/20W型でありカソード電圧が約 125V 程度となります。バイアスが深い真空管回路であり ドライブ電圧も大きくなり回路設計が大変です。たかが Ep-k 電圧 250V として設計した場合 無信号時入力電力はプレート損失以下でなければなりません。プレート供給電圧は Ep-k 電圧にカソードバイアス電圧を加えると 400V 程度としなければ正常動作しません。又この真空管のフレート損失は 13W です。A級増幅器の場合無信号時の入力電力がプレート損失内の動作と設計しなければなりません。真空管およびカソードバイアス抵抗からの非常に発熱の多いアンプとなってしまいました。このようなシリーズレギュレーター管を使った三極管アンプは効率が悪く 思っているほど良い音とはなりませんでした。レギュレーター管の特徴としてプレート抵抗が低くRp:280Ω,Gm:7000μmhos,μFactor: 2.0,Pd:13W,という通常のオーディオ三極管とは異なる数値であり使いこなすのには高度のテクニックが必要です。2A3 ではRp:800Ω,Gm:5250μmhos,μFactor :4.2,Pd:15W, と数値比較すれば特殊な真空管であるのが判明しますね。ところがWE421A,TANGSOL 5998 は同じレギュレーター双三極管ですが Rp:350Ω,Gm:15500μmhos,μFactor: 5.4,Pd:13W.とオーディオ用途の三極管に近い数値です。Ep-k 250Vの場合 WE421A のカソードバイアス抵抗器は合成抵抗値ですが735Ω Ek:39.2V となり プレート電流が 52.7mA です。ほぼ 2A3 A級シングルアンプに似通った動作特性です。最大出力は 2A3 より小さく 3.0W 程度でも道楽部屋の六半シングルコーン×2高効率スピーカー(95dB)では十分に活用できています。

ここで A級カソードバイアス・シングル増幅回路の場合 大まかなドライブ電圧の計算を記述します。まずはカソード電圧が基本となります。2A3 シングルの場合カソード抵抗750Ωに発生する電圧は 45V です。ドライブ電圧は45vp-p の信号がグリッドに入力されれば最大出力 3.5W が負荷抵抗2.5KΩのトランスに取り出せます。45Vp-p の信号を実効値に直すと45÷2÷√2から15.9V/rms の信号です。15.9Vの正弦波が前段ドライブ回路から歪なく供給すればよいことがわかります。歪なくそれ以上の能力が必要です。WE421A の場合カソード電圧は約39V です。計算すれば約13.8V/rms のドライブ電圧が必要です。近代管の6C-A7 の場合 三極管接続A級増幅では  Ep:350V,Ek:26V,Ik 70mA,Rl:3KΩ,(Eg-26V),Rk:370Ω,Rsg:470Ω,output:6.0W この数値は真空管規格表からです。カソード抵抗 370Ωにカソード電流 70mA からカソード電圧を求めると25.9V と判明します。ドライブ電圧を求めると 25.9Vp-p より 9.15V/rms と計算できます。2A3シングルのドライブ電圧から比較すると近代管である 6C-A7 は小さなドライブ電圧でより大きな出力が得られるのが判明します。ほとんどの場合ドライブ管もA級増幅ですね。信号をピークツーピーク(p-p)電圧でA級増幅ドライブ段を考察するのに便利かもしれません。電力管において特に真空管規格表でのドライブ電圧記載方法が P-P なのか rms 表示であるかを注意して見極めてください。規格表により記載表記が異なります。ドライブ管の歪率を改善すれば全体として歪率が良くなりますので ドライブ段の回路選択も重要です。

余談が多くなりました。大きく記載内容の方向性が狂ったため軌道修正します。



上記は  6C-A7(松下) 単管三極管接続 A級シングル増幅器の実験での動作点と音質点検動作状況確認試験です。

6C-A7   最大定格 Ep:800V    Esg:425V    P d:25W    Psg d:8W    Ik:150mA    Hv:6.3V     Hi:1.5A

A級シングル増幅器動作状況 Ep-k:392.9V    Ik:49.7mA    Ek:28.1V    Pd:19.6W

LUXKIT A3500 終段管 6C-A7p-p(松下)仕様において 三極管接続では最大出力は 20W であり ウルトラリニア(UL)接続では 40W です。又6L6GC 五極管接続では 40W です。接続方法及び真空管品種変更により最大出力及び音質違いが発生するようです。

有名な真空管  HI-i-Fi アンプに多用された信頼性の高い真空管です。Marantz 8B  Luxman SQ-38U   DYNACO STEREO 70 などに採用されています。

この真空管は5極管の3極管接続方式です。カソード電流にはプレート電流とスクリーングリッド電流が合算された電流が流れます。そのためスクリーングリッドにどれだけの電流が流れているかを調査しなければなりません。真空管規格表にはスクリーングリッド損失も明記されています。このような大型音声出力管の場合はスクリーングリッド損失は10W前後です。三極管接続に際してプレート(P)とスクリーングリッド(Sg)間には100Ωで接続されています。この100Ωに発生する電圧を電流換算すればスクリーングリッド電流が判明します。前面の測定端子  P・Sg  間の電圧を測定します。プレート損失は プレート電流×プレート・カソード間電圧で求められます。又スクリーングリッド損失は カソード・スクリーングリッド間電圧×スクリーングリッド電流 で求められます。検体 6C-A7 のプレート損失は 25W スクリーングリッド損失は 8W です。プレート・スクリーングリッド許容電力損失以下となるように回路設計しなければなりません。特にこの真空管の場合スクリーングリッドが赤熱する場合があります。スクリーングリッド入力電力がオーバーしていないか確認することが重要です。ここで多極管の三極管接続においての注意事項があります。最大印可できるスクリーングリッド電圧が問題です。この6C-A7 の場合 425V以上加えることができません。ブレード電圧の最大印可電圧は 800V ですね。三極管接続の場合 最大印可電圧はスクリーングリッド電圧以下にしなければなりません。

それらの制約により送信管 6146B のなどの場合スクリーングリッド印可電圧が低いため三極管接続とした場合供給電圧が低くなり実用とはなりません。それと同様に真空管式カラーテレビの水平出力管は大電力仕様の真空管ですが オーディオ用途には不向きです。水平偏向周波数は 15734Hz です。パルス増幅管でありリニアリティーを考えれば不向きです。またスクリーン電圧も送信管と似ており低い電圧です。三極管接続には不向きです。オーディオ用途としてテレビ受信管と使用できると思う真空管は 垂直出力管で垂直偏向周波数は約 60Hz です。特に三極管がオーディオ用真空管として活用可能と思います。垂直発振・電力増幅管として 6BX7GT 双三極管が有名です。単独管としてオーディオ用途となり 改良された真空管は傍熱型 6G-A4(GT) です。この真空管は 2A3 とよく似ており Ep-k 250V の場合 A級シングル増幅時  2.2W  Ep-k 280V では 3.2W 出力です。

左  JAN球 Fhilips ECG 6146W 右 NEC 2E26 自衛隊用 無線機保守管として保有

上図は無線機用送信管五極ビーム管です。五極管接続の増幅器では大きな出力が得られますが。三極管接続としては使い物になりません。6146W Max Esg :250V Max Ep:750V   2E26 Max Esg:200V Max Ep:300V 例のように送信管のスクリーングリッド印可電圧が低い場合が多いようです。無線機の変調器 A3 運用の場合 Hi-Fi とは異なり主に音声帯域での通信です。そのため音質より出力を優先します。より大きな出力を得るため AB2,B級増幅器が使用されます。Hi-Fi とは異なる増幅する周波数特性および歪特性に大きな違いがあります。

6C-A7 この真空管は多用途管として 各社・多用途増幅器として搭載されました。終戦後はUY-807p-p が拡声器増幅器として多くの公共施設に設置されていました。当時キンキン音の8吋マグネチックスピーカーも全盛です。その後 6C-A7p-p アンプが主流となり拡声用スピーカーもパーマネントダイナミックスピーカーになりました。6.5吋又は8吋が主流です。6C-A7p-p としては出力にはバリエーションがあり30~100W  まで用途により他機種製造されました。当時松下のサービス網では必ず 6C-A7,2本 5A-R4 は持参するのが常識でした。

トランジスター高出力拡声器が主流となったのは1970年後半です。1970年後半は国内各社で真空管製造中止となった時期です。当時の面白い思い出があります。選挙演説車両での拡声器です。トランジスターも初期では車載用PAとして出力が足りません。数ワットのトランジスター・メガホンは存在しました。そこで活躍した拡声器では 市販品はほとんど無く手作りの UY-807 シングルアンプにカーボンマイクとトランペットスピーカーとの組み合わせでした。真空管機器では DC:12V  の鉛バッテリーでは動作しません。現在ではインバーター回路で簡単ですが。 当時は機械式バイブレーターを使って昇圧です。真空管駆動用高電圧を確保していました。当時のカーラジオも真空管で4球スーパーラジオです。12B-E6,12B-D6.12A-V6.12A-Q5 であったと思います。真空管はもちろん12V管でした。高電圧昇圧はバイブレーターです。初期のカーラジオはゲルマニュームトランジスターであり 夏場の車内高温時は不思議と動作しません。音声電力トランジスターは TEN製 ゲルマニュームトランジスター 2SB42 A級シングル・アウトプットトランスを搭載と記憶です。夏場の車内高温による障害も多々ありました。当時の車はエアコンなどありません。車の発電機は現在のオルタネーターではありません。整流子(ブラシ)が使われた直流ダイナモ搭載でアイドリング時には充電できません。半世紀以上前の昔話です。



上記は 東芝 6G-B8 単管三極管接続 A級シングル増幅器の実験での動作点と音質点検動作状況確認試験です。

6G-B8   最大定格 Ep:800V    Esg:440V    P d:35W    Psg d:10W    Ik:200mA    Hv:6.3V     Hi:1.5A

A級シングル増幅器動作状況 Ep-k:378.5V    Ik:70mA    Ek:21.6V    Pd:26.5W

1964年東京で開催された東京オリンピックにおいて 各会場での拡声装置の PA用アンプとして多用されました。その拡声器アンプ内部には搭載された真空管として東芝しか製造されていない球であり 大電力増幅用のアンプとして 6G-B8 は君臨しました。5極管プッシュプル接続で 100W の出力を得ることができました。中には 6G-B8 パラレル・プッシュ・プレート最大電圧・AB2級アンプで最大 200W 出力アンプも存在します。現代の大規模コンサートなどでは モノラル半導体 アンプで 300W 出力機を複数台使用し KW運用は当たり前となっていますね。現代のイベントでは会場も大きくなっています。スピーカーも時代とともに変革しまし。終戦後学校の運動会では数十ワットの真空管  PAアンプにトランペットスピーカー複数台でも運用できていましたね。近年は EV・BOSE などの高出力コーン型およびホーン型マルチウエイスピーカーを使いスピーカーアレー接続が常識となっています。

1970年8月発行の雑誌を道楽部屋の本棚に保管してありました。電波技術誌です。6G-B8p-p AB1級で出力200Wです。低域専用のアンプであり当時マルチチャンネルステレオが流行っていました。





上図は55年前に発刊された雑誌・電波技術に掲載されていたものです。雑誌も年月により茶色く変色しています。手元に残っていました。当時の消耗品的な真空管の使い方でAB1級出力200W 片チャンネルたった3本の真空管です。次項目の6550p-p ウルトラリニア接続アンプですら最大出力は 60W です。この回路は初段5極管増幅・次段直結P-K分割アルティック型ドライブ回路です。恐れ入ります。一部分内容を参考に記載します。



上記は GE 6550A 単管三極管接続 A級シングル増幅器の実験での動作点と音質点検動作状況確認試験です。

6550A   最大定格 Ep:660V    Esg:440V    P d:42W    Psg d:6W    Ik:190mA    Hv:6.3V     Hi:1.6A

A級シングル増幅器動作状況 Ep-k:370.5V    Ik:70mA    Ek:37.3V    Pd:26.0W


上記は TANGSOL 6550 単管三極管接続 A級シングル増幅器の実験での動作点と音質点検動作状況確認試験です。

6550   最大定格 Ep:660V    Esg:440V    P d:42W    Psg d:6W    Ik:***mA    Hv:6.3V     Hi:1.8A

A級シングル増幅器動作状況 Ep-k:378.5V    Ik:70mA    Ek:21.6V    Pd:26.5W

この真空管は DYNACO MKⅢ UL接続アンプに使用されていた真空管です。最大出力は 60W。


上図は dynaco MARKⅢ の回路図及び外観図です。1975年当時のキット価格は 58,900円であり モノラルアンプですのでステレオとする場合2台必要です。以前所有していましたが友人に譲渡してしまい 現在手元にはありません。当時 LUXKIT KMQ-60 と聞き比べた結果音質的には LUX が気に入っていたため譲渡してしまいました。ダルマ型の大型真空管6550 UL 接続アンプです。真空管式メインアンプでは大出力な 部類であり60W 出力です。このアンプの特徴として終段管のアイドリング調整は 簡単なテスター一台だけでも調整可能となるような設計です。2本の終段管6550 カソードは共用としてあり カソード電流測定用の抵抗器は 11.2Ω 1W型が使われています。この抵抗の両端が 1.56V となるようにバイアス調整します。安価なテスターであっても使用するテスターのキャリブレーション用電源は 新品の単一型乾電池で校正するようになっています。新品電池の電圧でテスターを校正するわけです。ちなみに測定電圧が 1.56V であれば電流値は 140mA です。2本の真空管電流値であるため 一本当たりの電流は 70mA です。ただし条件があります。真空管を交換する場合は特性のそろったペアチューブを使うことが条件であり そのためDCバランス調整個所はありません。所有していた時に1本の 6550 が不良となり そのために GE 6550Aを8本購入してペアチューブ選択した記憶があります。現代修復する場合はバイアス回路の改造が必要です。なぜなら特性のそろった真空管は望めません。DCバランス調整回路を追加改造しなければ完全な調整はできないと思います。真空管試験装置に装着している真空管は故障していなかった真空管が写真のダルマ型 5998 です。



上記は CHINA KT-88 単管三極管接続 A級シングル増幅器の実験での動作点と音質点検動作状況確認試験です。

KT-88   最大定格 Ep:800V    Esg:600V    P d:35W    Psg d:6W    Ik:230mA    Hv:6.3V     Hi:1.6A

A級シングル増幅器動作状況 Ep-k:368.9V    Ik:70mA    Ek:37.1V    Pd:25.8W

この真空管アンプは手巻き電源トランスで工作しました。重量もあり現在ではほとんど稼働していないお飾り品です。KT-88 三極管接続アンプであり 出力は20W程度です。出力トランスは タムラ製作所 Fシリーズ F-783 5KΩ 50W型を採用しました。消費電力も多く道楽部屋では 6C-A7p-p 三極間接続アンプ 15W が常用アンプであり 道楽部屋では出番がありません。KT-88 の真空管はどのような音になるかを実験したアンプです。やはり世間で言われているように 6550, 6550A,KT-88,はほぼ同等管として動作ができることが実証できました。UL接続として実験したかったのですが 採用した出力トランスは Sg タップがありません。改造実験断念しました。

上記は安価な中国製です。有名な真空管は英国製ゴールドライオンです。高級真空管アンプとしては Mclntoch  Mc275 でしょうね。



上記は Radiotron 6F6G(ST14) 単管三極管接続 A級シングル増幅器の実験での動作点と音質点検動作状況確認試験です。五球スーパーラジオで有名な UY-42同等管です。通常の使用方法五極管接続で出力 4.8W もあったのですね。直熱三極管 2A3 であっても3.5Wしか出力はありません。戦前の銘球と呼ばれる直熱三極管 45 ですら2Wしか出力はありません。戦時中の並四・並三ラジオでは 12A,6ZP1 で出力は数百ミリワットしかありません。しかもスピーカーはキンキン音の8吋マグネチックスピーカーでした。幼いころからの思い出深い真空管です。国産の 42 は管壁がカーボンスートされてこのように電極が完全に見えることはありません。

6F6G   最大定格 Ep:375V    Esg:285V    P d:11W    Psg d:3.75W    Ik:***mA    Hv:6.3V     Hi:0.7A

A級シングル増幅器動作状況 Ep-k:287V    Ik:30mA    Ek:23.3V    Pd:8.61W

古典アンプとして有名な回路は 三極管接続 6F6 パラプッシュ Dr,オルソン アンプでしょうか。


上図は Dr'オルソンアンプの原回路図です。1947年に発表されました。小生は 6F6,6F6G 三極管接続AB1級ステレオアンプとして保有しています。6F6,はメタル管 6F6G ダルマ管を所有しており メタル管はガラス管と異なり金属の外壁です。ヒーターの薄暗い燈火が見えません。その意味もありダルマ型のガラス管 6F6G を実装しています。6F6系にはGT管(ガラスチューブ)も存在します。ダルマ型の真空管 五球スーパーラジオで有名な UY-42 同等管でソケットはUYソケットで6本足です。

オーディオ用途で所有していない電力増幅管として ビーム4極管構造出力管 6L6 は所有していません。6L6 は基準管でありメタル管構造です。この真空管の一回り小型が 6V6 メタル基準管で同じビーム管構造です 。6V6系の真空管は基準管のメタル管 6V6 を含め多種類所有しています。基準管の 6L6 系のシリーズ管としては トッププレートの UY-807, WE-350A,1625 です。ガラス管構造として 6L6GC,5881,などが 6L6系ビーム管として有名です。トッププレート管として 6146B,6146W,2E26を含め UY-807 および 1625 は所有している無線機の送信管の保守管として保管してあります。送信管を使った真空管式オーディオアンプ工作予定はありません。

左 東芝 UY-807 RCA 1625(VT-136)   SYLVANIA 1625  (ST-16)

上図は保管してある 6L6系トッププレートの通信管です。電気特性はほぼ同じです。UY-807 のヒーター仕様と 1625 とは異なります。807  6.3V,0.9A     1625  12.6V,0.45A であり真空管ソケットは大きな違いがあります。807は5ピンUYソケット 1625は7ピンは 6W-C5 と同じ足数ですがスモール ut と呼ばれ 1625はラージUTとなり共通性はありません。構造違いでは1625の電極下部のガラス製バタフライ部はシールドされていますが 807は存在しません。これらの真空管は無線通信用送信管です。オーディオ用途としては数は少ないと思います。今は西国に旅立った無線仲間で 6G-B6Gp-p (ST-16)ステレオアンプを組み立てて自慢していました。807そっくりです。本来の目的はテレビ水平出力管です。



古い jpeg file から見つけました。今となっては故人(Jh*A*Y)となった同年代の無線仲間による自作アンプです。すい臓がん末期症状でも自宅で亡くなる間際まではマイクを手放しませんでした。6G-B8Gp-p ステレオアンプです。アルミ弁当箱スタイル 小生も若かりし頃 無線機・受信機・アンプはこの弁当箱スタイルでした。画像から想像するに 初段赤メタル管 5693(6SJ7),ドライブ・位相反転管 6SN7GT,電力増幅管 6G-B8Gp-p,と推察です。500W 出力SSB送信機においても手作り品 真空管リニアアンプでした。彼は無線家 小生は無銭家です。

KT-88.6550,6550A, の真空管はほぼ同等管として設計動作することができます。ダルマ型 6550 はDYNACO MKⅢ に搭載されており スクリーングリッドは出力トランスの中間タップに接続されており ウルトラリニア(UL)方式、最大出力 60W 真空管アンプとして有名です。

現在真空管アンプとして完成品として販売されている機器はは 300B,  6C-A7/EL34 , KT-88系を使った真空管アンプが主流と思います。海外ではいまだに少量ですが真空管は製造されており入手が可能です。真空管システム保守が可能ですね。現役の Luxman では輸入品の真空管を選別使用し自社の真空管アンプに搭載されていると思います。

無銭庵 常用スピーカーの紹介

現在所有真空管アンプ 50C-A10 を使ったものは Luxman SQ-38FD しか所有していません。このアンプに接続しているスピーカーシステムは  ALTEC  LANSING 612C  604-8K 16"Duplex Loudspeaker です。小さな道楽部屋では大きな音で聞くことは不可能です。現在常用使用している真空管式メインアンプはハンドメイド品であり 4種類のアンプで遊んでいます。道楽部屋のスピーカーシステムは 三菱電機製 DIATONE P-610A(BTS)16Ω  16cm×2でしたが スポンジエッジ破損となり 現在は同じ DIATONE P-610FA 16Ω×2 のウレタンエッジ品となっています。マグネットはアルニコ磁石からフェライト磁石となってしまいました。音色については P-610A(BTS)とは少し変化がありました。スビカーボックス形式はフロア型バスレフで内容量は100リットルほどです。高域補正としてコーンツィーターDiatone TW-23  5cmを搭載。


常用スピーカーシステム

上記スピーカーの DIATONE P-610A(BTS) のスピーカーは日本放送協会(NHK)スタジオモニタースピーカーとして活用された BTS規格品でした。スピーカーエッジがぼろぼろとなり代用品として後続品を搭載しています。

SP BOXフロア型バスレフ方式 容量約100リットル

夜間の小音量ではこのスピーカーシステムが大活用します。このようなスピーカーシステムを常用しているためスピーカー最大入力電力として15Wまでとしないと 大出力パワーアンプを使った場合 スビカーを焼損する可能性があります。このスピーカーシステムでの能率は 95dB 程度であり 真空管アンプ出力1W以上もあればリスニングでの不満はありません。近年の80dB前後の能率の悪いスピーカーではありません。

各真空管アンプを駆動しているプリアンプは  LUXKIT A3400 STEREO CONTROL CENTER(Luxman CL-30)

System 1,  6C-A7 p-p 三極管接続  リークムラード型 片チャンネル 15W

System 2 ,  3C33 p-p 単管双三極管  リークムラード型 片チャンネル 10W

System 3,  6B-Q5 p-p 三極管接続  リークムラード型 片チャンネル 5.2W

System 4,  WE-421A  A級単管シングル 双三極管  12A-X7A SRPPドライブ 片チャンネル 3W

これらのアンプで道楽部屋では十分な音量でリスニングすることができます、一つのこだわりです。

多少参考になりましたか。自由人のお遊びです。

下記は使用しているスピーカー

三菱電機製 DIATONE P-610FA 16Ω INPUT 7W×2 フルレンジ・スピーカー

三菱電機製 DIATON TW-23 13Ω INPUT 10W  5cmコーン型ツィター・スピーカー

P-610A型スピーカーを方チャンネル2連としたため 高音域補正用としてコーン型ツィターを搭載 2WAY SPEAKER SYSTEMとして運用です。高域用カップリングコンデンサー 1μF

使用後10年弱で  P-610A(BTS) スピーカーはスポンジエッジがぼろぼろとなり使用できません。スピーカーコーン部エッジは セーム皮四分割品で再生しました。音質としてスポンジエッジ式とは大きな音質違いがありません。ダイアトーンの純正ボックス同等品としてブックシェルフ型スビカーとして工作しました。

四分割セーム皮で修復完了した DAITONE P-610A(BTS) 16Ω 3W

下図は 通称さんぱち,38(15inch,38cm)同軸スピーカーと 通称ろくはん,六半(6.5inch,16cm)フルレンジスピーカーの大きさの比較です。現代主流の80dB前後 能率の悪いスピーカーではありません。90dB 以上あります。

左 ALTEC LANSING 16inch 38cm 同軸 604-8K  右 六半 16cm  DAITONE P-610A(BTS) 再生品との比較

参考 
ALTEC LANSING 612C MONITER 604-8K DUPLEX LOUDSPEAKER SYSTEM

ENCLOSURE 
612C  608w, 749h,508d (mm)    Weight  51.2Kg   
Crossover(Dividing) NETWORK  INPUT POWER 65W
 Two-way at 1500Hz with a 12dB per octave slope for the low-frequencies and 18dB for high-frequencies  impedance 8Ω 
SPEAKR UNIT
 604-8K    System Type  full range Duplex  loudspeaker  weight 34 lbs(15.42Kg)  Dimensions 16inch(40.64cm)diameter × 18-3/16inch(22.38cm)deep
Frequency Response 20~20,000Hz
Nominal Free-Air LF cone Resonance: 30Hz
Pressure Sensitivity  103dB(new JIS)  98.5dB SPL(1W,500Hz~3KHz) 
 Low-Frequency  Voice Coils 3inch(76.2mm) diameter edge-wound  copper ribbon  magnets 5.6 lbs(2.54Kg) Ferrite Magnet 13,000 gauss  impedance 8Ω
 High-Frequency  Voice Coils 1 3/4inch(44.5mm) diameter edge-wound  aluminum ribbon  magnets 2.5 lbs(1.14Kg) Ferrite  Magnet 15,500 gauss  Mantaray Horn  60°H×40°V 1.0inch compression driver impedance 8Ω

ALTEC LANSING  604-8K DEVIDING NETWORK



By musenan sennin



2011年8月21日日曜日

LUX SQ38FD の修復・蘇生 編

Luxman SQ-38FD 修復・蘇生 における作業内容を記述します。国内では真空管製造においては最終段階での 約45年前に製造された骨董的な現代でも通用する真空管式プリメインアンプです。無銭庵 仙人と申します。
営利を目的としない 道楽・趣味の領域で記述しています。又過去の記憶・経験を整理して記載しています。誤解釈・誤記載が多々あると思いますが 骨董的な真空管式プリメインアンプの自己責任範囲での作業です。ご理解ください。参考程度とお考えください。   m(__ __)m

初期の常用システム分も追加として KMQ-60 について記載しました。この機種も同じ出力トランス故障に遭遇しています。改修作業内容についても SQ-38FD に似通っています。参考としてください。

何故 半世紀近くなる真空管アンプですが デジタル全盛時代でありながら現代でも愛用者が存在するのでしょうか。真空管アンプは元々古いデバイスで構成されています。その中でも三極管の音は多極管の音に比較して耳触りが良いのは何故でしょうか。それは三極管のリニアリティー(直線性)がよいのが理由と思います。S/N比は決して良いとは言えません。入力された信号が違った出力波形となりにくいためです。違った波形とは 増幅過程において微妙な歪が増加するからです。入力された信号が同じ形で増幅されないため違った音色になってしまいます。現代の高級といわれる半導体アンプ程、素直で癖のないアンプに仕上げられています。
三極管を使った高出力アンプが Luxman SQ-38FD です。全数三極管で構成されています。ただ 6267(EF86)は五極管ですが 回路的には三極管接続であり オール三極管アンプといえます。

修復完了した Luxman SQ-38FD-a

今回修復しています Luxman SQ-38FD ですがオーディオ雑誌などには改修作業内容を記載した書籍はほとんど発行されていません。真空管式無線機では 八重洲 FT-101などではメンテナンスマニュアルなどが発行され配線図・調整箇所など 技術的にも詳しく記載されています。単体雑誌として発行されています。業界では何か小細工をしているのでしょうか?需要がないのでしょうか?
それらの意味もあり修復の忘備録として今回作成しました。オーディオ雑誌では自作及び特殊な回路構成ばかりであり 現代でも通用するデザイン性の優れた過去に量産販売された SQ38シリーズなどの優秀なオーディオ機器を現在でも稼働できるようにするための手助けとして記載しました。自己解釈記載であるためメーカー・修理業者からお叱りを受ける記述内容かもしれません。自己責任による記述・作業内容です。

経験の少ない誰でもできる作業内容ではありません。

ある程度の電子回路知識と理解力及び加工・工作技術及び測定機器が準備できないと どこかの せ・ん・せ・い と呼ばれる 壊し屋となってしまいます。上記記述内容をご理解いただいた上での記載内容とご理解ください。なるべくオリジナルに近い修復となるように現在でも入手可能な部品などを吟味しています。特に不良率の高い供給不能の出力トランス OY15-5 を代替品 を考慮した上で なるべく初期性能と同等となるように試行錯誤の改修作業内容です。

プログサーバー掲載容量などにより 出力トランスであるOY15-5考察編、出力トランス考察資料編 自己解釈を含め分割し掲載しています。

Luxman MQ-60,MQ-60C,38.シリーズなどと LUXKIT KMQ-60,A3500 についても ほぼ同等の回路構成となっています。修理・調整の参考となれば幸いです。見苦しい素人撮影・デジタルカメラによる写真ですが掲載しました。元画像のJPEG DATAを縮小しての掲載です。
SQ-38FDで検索される方の内容を見てみますと 回路図と調整値を探されている方が多くおられます。根気よく探せば回路図などは見つかると思います。PDFファイルので掲載はしておりません。

過去約40年あまり LUXの管球システムを 愛用してきました。家電製品の音響機器では数年も使用すれば故障、10年もたてばメーカーでは補修部品供給不能、買い替えてくださいでおしまい。この大量消費時代において40年以上動作している家電商品はあるでしょうか。音響機器もコンシューマ扱いであれば家電製品の一部となります。ごく一部には特殊な音響メーカー(例として春日無線電機商会後のアキュフェーズ)ではできうる限り修復をします !! と費用の対価は別として修復してくれるメーカも存在します。LUXでも一応修理受付はされているようです。修復ができるか? できないか? は現物の状態を確認してからとホームページには記載されています。肝心の故障率が高い 出力トランスOY15-5・真空管50C-A10 などは枯渇していると思います。OY15-5は再生産されていません。TEACではAシリーズではほとんどメーカーサービスをお断りしていますが 製造後約35年経過していますが Xシリーズでは主要部品は再生産されておりメーカーサービスも受け付けてくれます。ほとんどの大手家電メーカーでは修復できず粗大ごみ扱いです。この時代に古い商品を修復・実働させるには大きな体力・努力・費用と時間が必要です。物を捨てられない症候群の小生にとっては時間が許す限り修復・蘇生するように努力しています。他人から見ればゴミの山、本人にとっては宝の山である収集した部品、測定機器、新規購入部材等を使って修復しました。

修復前の出力トランス配線
現在の半導体製品は古い真空管システムに比較して 特性、使いやすさ、値段におい以前と格段の差 時代差があります。過去の生活水準に比較して購入単価も下がり 購入しやすくなっております。Luxman SQ-38FD 発売当時にサラリーマン1ヶ月の給料で購入できませんでした。当時の大卒初任給3か月分程度です。現在においては機器の変革、進歩があり 機能性においても使いやすく 見てくれは個人の感覚ですが 軽量てプラスチック筐体がほとんどであり安価となっています。CDラジカセなどは海外製であり数千円で入手できます。重さで商品の良し悪しを決めつけるのは・・・・考えさせていただきます。
現在真空管シテテム以外に新しいデジタル機器、商品群を導入して 運用・活用しています。新旧入り乱れてのシステム構成となっており 趣味の領域を楽しんでいます。  
なぜか人の感性では表現できない温かみのある真空管システムに愛着があります。温故知新、蘇らせたい思いで修復、保守作業をしてきました。

余談です ! ! !

現在ほしい商品としては デジタル録音・再生デッキです。ハードディスク内臓、入出力ドライブは せめて DVD RW対応、USB入出力、メモリーIC入出力 LAN接続、アナログ入出力、録音・再生可能な サンプリング周波数が 96KHz まで対応する A/D,D/Aコンバーターが特性の良いデッキがあればと思います。しかも省電力仕様です。PCでは機器の立ち上がりが遅く 24インチ・モニターも含めLEDバックライトですが消費電力も馬鹿になりません。又CD再生でも ディスクを一旦メモリー・HDDに記憶し 再生すれば 屁理屈評論家が批評する ジッター、音とびも発生しません。CDプレーヤーもしかりです。いまだに開発当時とあまり変わらないRAM容量です。大容量メモリーも安価となっていますので音楽データーを高速で読み取りメモリー内DATAから順次再生すれば制御の基準信号は安定した水晶発振です。メモリー再生とすればよいと思いますが ? 後はD/Aコンバーター(DAC)の品質に頼るだけです。インターネットの環境では音源も落ちていますので拾い集めることもできます。今話題のハイレゾ音源も有償となりますが入手が可能です。96KHz,24bit WAVEファイルの耳では聞きわけができない倍音を含んだCD臭くないアナグロ的な音源も再生可能なシステムを真空管式アンプと能率の高いスピーカーで構築しています。LPレコード再生よりはS/N比が非常に優秀であり ランブル・スクラッチノイズも発生しません。操作も簡単であり高音質で再生できます。変コツ・因業爺さんたちのPCを操作できない環境ではありえない新しい技術ですがシステムとして新・旧入り乱れた面白い環境です。数十万円もする高級MCカートリッジなどには手が出せません。よほど特性のよい耳をお持ちの方と想像します。一度オーディオジェネレーターで自分の可聴周波数領域を測定されたらいかがでしょうか ? 10KHzの信号が明瞭に聞こえますか ?

音源がHDD記録であれば PCMファイルでも 2TB もあれば 音源保管場所に困りません。しかもUSB HDDでバックアップ音楽ファイルも作成できます。又プログラム再生で ファイル別に管理をすれば 長時間好みの再生が可能となります。どこかの音響メーカーさん製造してくれないでしょうか ? この頃ようやくLAN・USBメモリーカードを使った高級再生装置が販売されていますがテープデッキのように録音・再生ができず再生のみです。SQ-38FD 程度の大きさで 木箱仕様、安価な汎用7~9インチディスプレー搭載 リモコン代用キーボード・マウスは 2.4GHz無線とすればすっきりします。現在ほしいと思う夢のオーディオ機器です。たぶんこのような機器ですと 法律も改正が必要ですね。利権者の著作権とやらです。技術的には可能と思いますが ? デッキとは名ばかり コピーマシーン ? ですね。

上記機能は現用PCでの動作環境です。自作ミドルタワー Core i5 3470  OS win8.1 64bit System disk SSD 120G の PCです。メモリーも DDR3-1600 4Gから8Gを2枚実装していますので 音楽CD DISKであれば1GもDATA容量はありません。現実の音楽CDでは再生できる時間によりますが通常500M~750M程度です。HDDに記憶しなくてもメモリーだけでも記憶に余裕があります。CDの音楽DATAなどはSDメモリーに数枚分音楽DATAとして収容が可能です。1000円も出せば数GのSDメモリーが購入できます。又DVDディスクドライブもDATAを40倍速で読み込んでいます。元々このPCはハイビジョンカメラ画像を処理・編集目的で作成しましたので音楽データー処理などは非常に軽い運転動作です。PC内はノイズの塊のためオーディオ用の入出力装置(A/D,D/Aコンバター)はUSB仕様としてPC外部で動作します。テープデッキでは記録媒体は磁気テープですがPCではHDD(ハードディスクドライブ)も同様の磁気記録媒体です。省電力ではありません。PCと真空管システムが動作すると部屋の環境は ? 想像してください。夏は地獄、冬は暖房器・・・・となります。

現在のPCは Intel Processor Core i5 11400 MB,Z490 OS Windows 11 pro で運用しています。以前のPCでは Windows 10 Pro は Windows 11 Pro にアップデートできません。CPU脆弱とMBが対応できません。仕方なく新規PC工作です。メモリーは  PC4-25600 DDR4-3200 8G 2枚搭載で同じくミドルタワーPCで運用しています。System disk SSD-500G DATADISK HDD 4TB に容量変更しました。Windows 11 Pro の環境下でも何の不自由もなくオーディオ装置の一部として動作しています。(2021/12/29 追記)

現在稼働しているメインシステムのコントロールアンプは LUXKIT A3400(CL-30) であり組み立て後40数年経過しています。色々トラブルに遭遇しましたが問題を解決し 現在でも不自由なく活用できています。メインアンプは真空管式三極管もしくは三極管接続仕様4台を気分により選別使用です。既製品の量産機ではありません。ハンドメイド機器です。夏場はやはり工作した半導体アンプの出番となります。音色としては真空管と違いがありますが消費電力と熱放出作用により半導体アンプの出番も多くなります。

すみません。前置きが長くなってしまいました。時々横道にそれ脱線しながら進みます。愛嬌とご勘弁ください。国語が苦手ですので誤字・誤記載・誤解釈が多々発生していると思います。文章校正も一人親方仕事です。まずは修復計画から駒をすすめます。

最終目標は心地よい音楽を聴きながらのお昼寝です。


修復計画

今回 LUX(Luxman) SQ-38FD 修復・蘇生にあたり自分なりの目標を作成しました。

電力出力真空管試験装置(テストサーキット)
1. 自作アンプではできない 特性およびデザイン性の優れた商品をオリジナルに近い状態での修復。大幅な改造は控える。

2. 出力トランス OY15-5 は他社には真似のできない良質の特性が特徴だが 同一故障の多発に悩まされたため 代替えトランスを選別し修復する。又電気動作特性も考慮する。

又シャーシーに取り付けに際し 金属加工を最小限にする。
出力トランス OY15-5 考察については別枠を参照してください。

3. 出力管の選定 オリジナルでは NEC 50C-A10 が使用されおり保守管として入手が困難である。SQ-38FD-b は代替え出力管の選定。
DELICA 真空管チェッカー 1001型
現在10本近くの 50C-A10 保守管を保有しているが 将来のメンテナンスも考慮する。
真空管のペアリング作業は自作テストサーキットを使用し各出力管の動作点を確認する。

4. 機能部品の交換及び現有部品の良否判定をした上で 使用可能な部品はそのまま使用する。無闇には交換しない。

5. 電圧増幅管については gmチェッカーにより判別する。(DELICA MODEL 1001)
  出力管においては gmチェッカーのみでは詳細の電力管動作状況の把握が不明確であったため 自作テストサーキットにより個々の真空管実働状況を検証する。
道楽部屋骨董品測定器群

6. VR、スイッチ類は保守部品が無いため代替え部品等を検討するが 使用に差支えがない場合 接点復活剤を使用して修復する。部品交換には費用と労力が必要。

7. 真空管ソケットの嵌合度合いはショックテストを実施してノイズが発生する場合は交換する。
ショックテストでノイズが発生しない場合はクリーニングに留める。

8. 最終完成動作確認。 物理動作は測定機器を使用し データーを取り確認するが 自己満足の道楽 自分のヒアリングにより完成とする。


上記目標を立てて修復作業をします。



画像は 自作 電力増幅管テストサーキット、真空管gmチェツカー、テストベンチの骨董品測定器類 です。一応自己校正を実施してある測定機器類であり 各測定機器類は校正証明は取得していませんが スペック誤差内での運用です。修復作業においては作業前校正作業(キャリブレーション)は必須項目です。

分解調査した LUX OY15-5
過去において真空管・半導体アンプの工作、LUXの真空管アンプ、他社音響製品は多数道楽で修復・調整作業はしてきましたが 詳細なデーター、写真など数多く保管していません。今回修復に際して詳細なDATAを収集目的で 3台はジャンク品であり部品取りの商品、動作不動品の真空管式プリ・メインアンプ LUX 38シリーズの中から販売台数の多い SQ-38FD を修理・蘇生を始めました。小生常用のシステムは真空管式ですが分離しています。1台目をSQ-38FD_a 2台目をSQ-38FD_b 3台目SQ-38FD_cと呼称します。
修復前のアンプ内部
3台目は真空管全数・出力トランス2個が抜き取られており木製ケースは傷・変色箇所がありましたが全面・後面パネルが無傷であったためのため衝動買いしてしまいました。あおりでお小遣いが目減りしています。

入手後各部を目視確認実施、特に電気部品の変色、変形など状況確認と大まかな清掃を実施します。真空管をセットから抜き取りフエルトペンで番号を付加し別保管します。
電源挿入は各部の点検後通電します。ジャンク品であり波及事故を防止する為です。


真空管を抜き取ることにより各部品の抵抗値、容量値の測定を回路計、テスター(マルチメーター)でチェックします。真空管を抜き取ることにより回路網の末端が開放状態となり測定誤差が小さくなります。(ヒーターが加熱していなければほぼ真空管回路は開放状態)




Class AA です

今回最初に点検した部品は出力トランス OY15-5 の直流抵抗値の測定でした。現在はアナログテスターからデジタルテスターに時代と共に変化しています。安価な1000円以下のデジタルテスターも自己校正しましたが大きな測定誤差もなく点検することができます。測定前には誤差1%以内の精密抵抗等で使用する測定器は校正しないと正確な判断、良い結果は得られません。常用使用している回路計(テスター)はアナログですが YEW TYPE 3201 JIC C 1202 class AA 国内唯一〄規格の回路計です。小生も骨董品、測定機器も骨董品です。常用精密測定用としてADVANTEST製据え置き型デジタルマルチメーターも導入しています。自己校正用精密測定器は0.5級下記記載のYEW製です。




作業前測定機器の準備および自己校正の必要性


常用使用の回路計 YEW3201 と自衛隊仕様 JMU-Q1
随時0.5級YEW精密測定器により各測定機器の自己校正作業を実施しています。メーカーの校正証明は取得していませんが 取引証明の必要のない自己満足、道楽の領域での使用です。0.5級の測定器であれば何十年経過していても大きな狂いはほとんどありません。製造メーカーYEWでは15年をめどに買い替え推奨されています。測定データを得るにあたり 標準(スタンダード)値が狂っておれば結果も正確でなく 比較検討ができません。測定前には自己校正もしくは 違う測定機器との表示値の比較点検を実施して誤差を把握してください。

0.5級の測定器は精密測定用機器です。常用で使用するものではありません。通常の回路計(テスター)であれば誤差が2.5%以内ですが誤測定などにより狂いが発生します。その常用測定機器の精度を確保・確認するのに0.5級精密測定器で校正もしくは 誤差を把握し 測定値を読み取ります。

自己校正用精密測定器

校正用 直流電圧、電流計 YEW TYPE 2012 00  JIS C 1102 0.5級相当
校正用 交流電圧、電流計 YEW TYPE 2014 00  JIS C 1102 0.5級相当
校正用 交流電流計     YEW TYPE 2013 14  JIS C 1102 0.5級相当
校正用 交流電圧計     YEW TYPE 2013 18  JIS C 1102 0.5級相当
測定用 単相電力計     YEW TYPE 2041 02  JIS C 1102 0.5級相当
校正用 可変抵抗器     YEW TYPE 2786 10 ダイアル型 0.05~0.1%誤差 
上記精密測定器、回路計は現在でもYEWで製造、販売されています。これらの測定機器については Google+のコレクション欄の"道楽作業に使用する骨董品測定機器類のお話"に簡単な機器説明をしてあります。  

追記

Google+のコレクションは2019年4月に廃止となりました。その意味から別枠で真空管オーディオに使用する測定機器類のお話として別枠でブログを立ち上げました。興味のある方は覗いてください。
 musenan20.blogspot.com を参照

インピーダンスブリッジ DELICA IMPEDANCE BRIDGE MODEL 1100


DELICA インピーダンスブリッジ 1100型
インピーダンスブリッジでは 測定するトランスの 1000Hz におけるインピーダンスの測定及びトランス巻線比測定ができます。又測定器内部には基準正弦波信号 1000Hz を使って コンデンサー容量値、コイルのインダンタンス値などが 測定可能です。機器校正は±0.1%~±1%の精密抵抗器、±1%の精密コンデンサーで校正し 機器測定誤差を把握します。アナログ回路計より 精密な抵抗値などが計測可能です。

出力トランスのインピーダンス・DCR・巻線比及び各パーツの精密測定及び動作試験作業については musenan03.blogspot.com  を参照してください。
インピーダンスブリッジ MODEL 1100について説明・解析しました。

常用使用する測定機器類 テスター(アナログ・デジタル回路計)、オシロ、ミリバル、周波数カウンター、据え置き型デジタルマルチメーター、低周波発振器、歪率計、ダミーロード、ワウ・フラ計、オーディオ・アッテネーターなどは 随時自己校正して使用します。
精密可変抵抗器と校正中のYEW3201 抵抗レンジ

左図は常用回路計(テスター) YEW 3201 抵抗値測定レンジ 自己校正作業写真です。

YEW3201回路計 自己校正作業については 
musenan04.blogspot.com  を参照してください。自己校正の方法などを記載しています。
精密測定器 YEW 278610 可変抵抗器と回路計表示値と精密抵抗値との比較校正作業です。回路計のスペックでは抵抗レンジの誤差は±3%と明記。 範囲内の表示になっているかを確認、校正します。DC電圧、電流は±2.5%の誤差が許容範囲とスペックに記載されていました。この回路計は製造後40数年経過していますが現在でも支障なく使用することができます。

常用回路計の点検修理・校正・調整しますと 各モード、大きな狂いもなく メーカー出荷時の スペック範囲内に収まりました。

その他の測定器、治具も自己校正して使用します。 オシロスコープ、ACミリバル、絶縁抵抗計(500Vメガー)、接地抵抗計、高感度デジタルクランプメーター、デジタル温度計、など汎用品以外に 無線設備用として高周波関連の SSG、ディップメーター、RFパワーメーター、レーザーパワーメーター、電界強度計、スペアナ、RFダミーロード、産業用CV,CC定電圧電源 等を保有し活用し道楽作業で活用しています。

1~2万円前後のデジタルテスターも校正しましたが誤差は少なく 読み違いがありません。優秀でした。自己で修理、校正ができない場合はメーカー修理より 新品を購入する方が安価になると思います。
この数十年間 同じタイプのアナログ回路計を複数台所有しており アナログ回路計の出番は未だに数多くなります。車のスピードメーターと同様 デジタル数字を頭で判断するよりも 瞬時に指針の位置で判断できると同じです。 体がアナログ表示に慣れています。特に微妙な半導体の良否判定においてはアナログ表示がベストです。デジタル表示は測定内容により 数字が暴れて反対に使用しづらい面もあります。固定値表示のような測定においては デジタル表示が誤差も少なくベストです。

アドバン製200万円のスペアナは校正に出すと 校正証明書を取得するには 約20万円前後の校正費用が発生します。道楽の領域では費用の出費はちょっと考えさせていただきます。故障したり精度が出ていない場合測定器類は内部構造を解析し 自己で点検、改修、調整、管理、校正して使用します。

少し横道にそれたかもしれませんが作業前には測定機器を点検してください。測定機器の準備が整いました。

本題の出力トランスの良否判定に戻します。

一次巻線 P1~-B1 間抵抗値測定

一次巻線 P2~B2 間抵抗値測定
SQ-38FD OY15-5 の良否判断として 諸先輩の中には !!! 出力トランス1次巻線抵抗値測定だけでは 出力トランスの良否が判定できない !!! と断言される方も現実にはおられます。根拠の詳細は説明されていません。簡単な説明程度です。小生はトランスの巻線構造の把握及び一次巻線直流抵抗値の測定によりほぼ良否の確認ができると判断します。詳細な判断材料としては 部品のばらつき等を考慮し 実働試験、インピダンスブリッジなどで判断します。別枠で報告しています OY15-5 の故障原因を追求、内部構造、使用部材を考察した上での 自己判断です。
テストサーキットを工作し裏付けが取れました。抵抗値が違った出力トランスでは実験の結果、物理特性上良い結果が得られませんでした。歪率及び最大電力値に大きな差が確認できました。

オーディオ帯域のエネルギーを伝送するトランスであることからトランスの動作原理・理論により1000Hzなどの正弦波信号で判断するのが正規の検証です。この検証を簡単に測定できるのが インピーダンスブリッジです。簡易検証用ツールとして商用電源を利用し検証される方もおられるようです。動作原理が理解できればテストサーキット(試験台)は工作できます。
これらを踏まえた上のでの短時間で判断できる目安を記載します。

トランスの動作原理・簡単な理論・簡易測定方法などについてはトランス代替考察資料編に個人的な見解ですが記載しました。 luxsq38fd02.blogspot.com

出力トランス良否の目安 (自己判断)

自己校正を実施した測定機器を使用しての判断です。
検体の LUX OY15-5 の場合 B1-P1,B2-P2 各端子間の直流抵抗値としては 約165Ω前後 が良品目安となります。P1-P2間では 約330Ω前後 が良品目安となります。SG端子はB端子から 約44% の巻線位置にありますので B1-SG1,B2-SG-2端子間 約78Ω前後 となり P1-SG1,P2-SG-2間では 約88Ω前後 となっていました。巻線構造により各SGタップとの抵抗値は等しくありません。20℃前後での直流抵抗値です。各SGタップ位置の抵抗値は巻線比に比例していません。トランスを分解調査した結果です。納得できました。
(各測定機器は校正証明を取得していないものでの測定値結果)

LUXのアンプでは出力トランスの一次側巻線直流抵抗に発生する電圧によるバイアス調整作業であるアイドリング電流・DCバランス調整方法です。当時この調整で故障したトランスでの故障原因がわからず過去には悩みました。小生の経験ではほとんどは一次巻線抵抗値高化です。中途半端な故障で悩みます。トランスの故障には様々な故障状態があります。レアーショート(焼損)、抵抗値高化、断線などが主な故障状態です。今回トランスを分解調査の結果出力トランスOY-15-5の故障原因が判明しました。

調査した出力トランス SQ-38FD-a
LUX出力トランス巻線構造は分割巻きで複雑な構造です。トランスの特性に自信があるからできることです。製造当時のLUXKIT調整マニュアルKMQ-60,A3500に記載されている調整電圧値から 出力管アイドリング電流値はオームの法則が理解できれば調整する電流値が記載されていなくとも計算すれば判明します。又真空管規格表により裏付けも取れました。一次側巻線に発生する電圧が8.0Vの場合 トランス現物で測定した抵抗値で計算すると電流は約48mAと計算できます。一次巻線抵抗値には巻線構造による誤差が結構発生します。数%誤差はあります。違う点から考察するとアイドリング電流が50mA と仮定すると 発生した電圧での調整値は 8.2~7.8V ですから計算するとトランスの一次巻線抵抗は164~156Ωと計算できます。今回検体の測定結果によりP-B間の抵抗値は約165Ωは良品と判断しました。誤差は必ず発生しますのでこの値の±5%が良品値としました。測定する時点での検体温度により抵抗値は多少変化します。当時のバイアス調整ではほとんどがアナログ回路計(テスター)を使っての調整作業です。現在入手できる測定機器と比較すると測定器精度は良くありません。当時はYEW3201回路計を使って調整しています。現在も複数台所有していますが自己校正の結果 大きな狂いもなくメーカー出荷時のスペック以内で推移しています。
使用される測定機器の違いにより測定誤差は必ず発生します。記載事項は個人的見解参考程度とご理解ください。

調査・測定結果から 検体Bは ほぼ正常、検体Aは 不良、であると判断しました。

LUXKIT
の調整マニュアルで指定された調整方法とは異なりますが 現時点での最良方策は 他社のトランスに載せ替えた場合など カソードに電流測定用精密抵抗(10Ω±1% 1/2W)を追加すると より正確な調整が可能となります。抵抗に発生する電圧を電流値に換算します。オームの法則によりアイドリング電流値が50mAの場合は抵抗に0.5Vの電圧が発生します。このように比較的低い直流電圧を測定しますので校正された精度のよい電圧計の準備が必要です。出力トランス一次巻線に発生する電圧での調整より正確な調整ができます。又精密抵抗も複数本から精密測定をして選別すればより誤差は少なくなります。
終段出力真空管 50C-A10 一本当たりのアイドリング電流が50mAと仮定すると KMQ-60 マニュアルからの調整電圧 8Vですので出力トランス一次巻線の抵抗値は簡単に求まります。160Ωですね。この数値が出力トランス OY15-5 のP1-B1,P2-B2 間の抵抗値といえます。これらの考察から 電流測定用カソード抵抗を追加してアイドリング電流を確認するわけです。

真空管回路では各部品などで結構ばらつき(誤差)が現実には発生します。ここまでシビアに追究しなくとも 回路計(テスター)での調整で真空管アンプとして正常に動作します。使用されている部品・回路・測定方法などの考え方を説明・明記しました。作業内容が理解できれば他でも判断材料として応用ができます。

出力トランスはカタログで確認するとアンバランス電流値が記載されています。プッシュプルトランスの場合は出力トランス一次側に流れる電流値に違いがあると トランスのコアが発生したアンバランス電流によりコアが磁化されて特性が悪くなります。高級な出力トランスになればなるほどシビアな数値になりますので 各真空管に流れる電流は精密に調整しなければなりません。それも真空管が安定動作になってから調整しますので最低30分以上経過してからの調整となります。通電後はまず仮調整を実施します。バイアス変動値を確認後本調整を実施します。ある程度の変動は数時間経過しても多少ありますが 30分以上経過すれば ほぼ安定すると思います。バイアス不安定が長く続くようであればであれば出力管の寿命かもしれません。多くのトランスではアンバランス電流値として10mA以内の値です。

真空管アンプでは通常通電後の音質と30分後の音質に違いが発生するといわれます。動作が安定した状態で調整しているからです。真空管ではカソードの熱電子放出状態がカソードの温度により放出量が変化と商用電源電圧変動による変化が主な原因です。真空管アンプでは通電後しばらくは不安定な動作をしています。固定バイアスの場合通電後正規に調整したとしても時間が経過すれば電流値・DCバランスがほとんどの場合崩れています。これらの理由により自己バイアス回路はカソード抵抗が電流制限抵抗として働きバイアス電圧による電流の変化範囲は小さくなります。その欠点としてはAB1級増幅回路では最大出力電力は減少します。A級増幅回路では自己バイアス回路が多用されます。オーディオ用大型出力真空管として50C-A10は元々ばらつきが多く変動率が高い真空管で有名です。固定バイアス動作では精神上よくありません。製造コスト削減に寄与するため特性を犠牲として作成された迷(銘)球真空管です。その後の8045Gは国産オーディオ用出力管として最後であり50C-A10程製造本数は多くありません。諸問題を改善・開発された真空管です。海外製真空管では同等クラスは KT-88,6550Aでしょうね。国産では東芝の6G-B8が存在します。当時LUXでは東芝の真空管は採用されずほとんどは松下とNEC製です。

半導体アンプでも温度によるアイドリング電流変化として同じような現象が発生します。トランジスターを熱結合して制御しています。一部の半導体アンプでは終段がA級プッシュプルアンプの場合常時変動の少ないアイドリング電流が入力信号に比例せず大量に流れるため真空管アンプに負けないぐらい発熱するアンプも存在します。AB1級に比較すると最大電力値は小さい値です。

出力トランス測定結果


本体より取出した出力トランス OY15-5
SQ-38FD_a 写真のごとく一次巻線抵抗値測定結果により1個目はほぼ正常、2個目は片側抵抗値高化が認められる。

SQ-38FD_b 1個目一次巻き線抵抗値両巻き線とも断線、2個目は一次巻線片側断線と片側抵抗値高化が認められる。OPT2台ともご臨終でした。

SQ-38FD_c  については入手時出力トランスが抜き取られており詳細は不明です。

上記の検体点検結果により生存率が25% LUX OY15-5 が如何に信頼性が無い証拠です。製造後40年前後経過していますので時効かもしれません。しかし不良の多い出力トランスです。

過去の例として 40年ほど前に組み立てキットとして購入した  KMQ-60 で使用開始後約8年ほどで出力トランス不良、又片チャンネルも数年後には不良発生となりました。当時LUXのカタログではトランスは10年保証と明記されていましたので故障品をメーカーに送付したが 音沙汰がなく 泣き寝入りです。LUXの本社機構が関西大阪市西成区、豊中市から関東大田区、横浜市に変わり同時に社名も変更、ALPINEのロゴもあり 会社自体が変遷の時代でした。

出力トランスの選定


TANGO CRD-5 搭載 SQ-38FD-a
上記の測定結果から SQ-38FD のシャーシー構造により取り付け可能な他社の出力トランスは限定されます。LUX OY15-5は新規にLUXに注文すれば新巻1個あたり 36000円、又供給不能との未確認情報です。 懐具合を考慮し小生の自作 6V6 P-P 3極管接続アンプに使用していました 旧タンゴ CRD-5 を SQ-38FD_aに搭載。 又新規購入は新タンゴ ISO FE-25-5SQ38FD_bに搭載しました。SQ-38FD_c OY15-5もどきに調所電器製OY15-5互換トランスを搭載して修復しました。KMQ-60についてはもどきトランス内部にはノグチトランス PMF28P-5K を搭載しました。この場合トランスケースは元のままですので外観上は判別できません。




2017年5月において 出力トランス生産再開の情報

MJ雑誌の広告ではISOが各トランスの再生産を開始しました。新会社名は アイエスオートランスフォーマーズ となっており SQ-38FD 代替えトランスとして最有力候補であった タンゴ CRD-5 ISOタンゴ FE25-5  今回再生産品 FC25-5 です。税込み18,300円となっていました、この出力トランスも同等性能と思われ 代替え用出力トランスとしては ほぼNFB回路調整をしなくてもLUX  OY15-5 と同等特性が得られると思います。トランス高さは以前の機種と異なり95hでOY15-5とほぼ同じ高さです。
トランスケースを黒色艶消しで塗装すれば見た目でも代替えトランスとなります。
又シングル用ユニバーサル出力トランス FC-12S として再生産されています。価格はFC25-5 と同様の 18,300円 です。入門者用真空管アンプ工作において様々な真空管に対応ができる 最良の出力トランスと思います。

OY15-5に比較して最大出力値は劣りますがシャーシーに収まり具合と金属加工の手間を考慮しました。トランスの取り付け穴が同一でありトランス取り付けネジ穴4箇所の加工で完了します。同じくトランスケース入りで タムラ F-683を候補として考えましたが端子台の加工寸法が大きく労力と懐具合により選定外となりました。一番楽チンは OY15-5もどき を使うのですがもどきを加工に時間が要するため躊躇しました。合わせカバータイプの出力トランスも候補とすれば選択領域が広くなります。リード線付きの場合端子台の配線の接続に加工が必要となります。今回は容姿にこだわりケース付きを選定しました。選択肢としてはOY15-5のトランス修理依頼することも可能です。

2018年9月 朗報ではありません

この9月には秋葉原のノグチトランス販売㈱が閉店となりました。東京出張時よく立ち寄っていたのですが残念でなりません。ほとんどは通販ですが多種類のトランスを購入しました。ノグチオリジナルトランスも好評でしたが時代の流れでしょうか ? 真空管アンプ工作・修復も困難となりつつあります。老舗であるタムラ製作所も真空管式トランスは製造中止となり 優秀な真空管用トランスは今後期待できません。真空管アンプ保守にも影響すると思います。

2018年11月 一安心です

秋葉原ノグチトランス販売㈱の廃業に困惑していましたが 同じ場所で販売内容は同じのゼネラルトランス販売㈱が営業を引き継ぎしました。ほぼ同じ商品の販売となり安堵しました。MJ無銭と実験12月誌に広告が記載されました。真空管アンプ自作派にとっては朗報です。来店する場合営業日と販売時間帯はホームページなどで確認したほうが良いと思います。

OY15-5もどきの作成及び OY15-5 内部構造解析については musenan.blogspot.com  を参照してください。

調所電器製 OY15-5 互換トランス
トランス製造メーカーにOY15-5のコアを送付して巻き替えを検討し探していました。今回山形県にある ㈱調所電器さんに相談しましたらオーダーメイドで巻き替えが可能であることが判明しました。オリジナルと同じ巻線構造であれば高額となりますが作製してくれます。又互換品のトランスを随時製造されています。巻線構造はオリジナルとは異なりますが不良品トランスを送付しますとトランスを分解して互換品のトランスを搭載して送り返す方法です。分解組み立てを調所電器さんでの作業となりますので無駄な労力は発生しません。オリジナルと同じトランスの巻き替えよりは新品の互換品トランスに載せ替えがコスト的にも有利となります。詳細については上記ブログまでジャンプ又は調所電器さんのホームページにアクセスしてください。

調所電器さんの話では互換トランスと載せ替えを実施したトランスの数は結構あるようです。トランスケースは元のままですので 流通している機器では純正ではなくもどき出力トランスを搭載したアンプかもしれません。見た目では判断できません。下記写真のように! ! !  LUX純正トランスか ?  互換トランスか ?  はヒヤリングで見破れる人はどれだけおられるでしょうか疑問です。純正トランスと互換トランスの構造には多少違いがあります。コア材は同一であり同じく分割巻き構造で製造されています。

調所電器製互換トランス搭載 OY15-5もどきのトランス SQ-38FD-c


LUX OY15-5 に代替え可能な出力トランスの寸法及び特性(各社古いカタログより引用)

96d*85w*96h     30φ     LUX         OY15-5      f=30Hz    34W   f=20Hz   15W
83d*78w*104h   30φ     ISO          FX-40-5     f=45HZ   40W
83d*78w*80h      30φ    ISO          FE-25-5     f=50Hz   25W
83d*75w*80h      30φ    TANGO     CRD-5       f=40Hz    20W    f=50Hz   25W
90d*80w*105h   44φ     TAMURA   F-683         不明      30W
80d*88w*110h     30φ   HASIMOTO HW-25-5    f=45Hz    25W 
80d*88w*110h     30φ   HASIMOTO  HW-40-5    f=45Hz    40W 
72d*78w*95h         30φ  ISOトランス FC-25-5    f=50Hz   25W

2017/5 資料追加

各社のカタログ表示方法、測定方法、データー周波数が違っています。HASIMOTO(山水)のトランスについてはトランスの高さが LUX OY15-5よりも14mm背が高く搭載できないと判断します。
OY15-5 は非常に優秀な出力トランスです。周波数特性、位相特性、損失、インダクタンス、アンバランス電流値、安全線電流値などはメーカー発表の仕様を確認してください。上記トランスメーカーの中でISO・TANGOは廃業されていますので新品入手は困難になると思います。

朗報です。
2017年春 アイエスオートランスフォーマーズ として同等機種の生産を始めました。ISOはタンゴ・平田電機製作所のライセンスで製造されていましたが アイエスオートランスは新規設計されているようですので 現物FC-25-5SQ-38FDに搭載修復していませんので修復後の特性などは不明です。あくまでも参考としてください。真空管用トランスメーカーが少なくなっている時代にありがたいことです。

あくまでもケース入りの出力トランスを使用するには トランスを自己で分解・載せ替えできない方であれば 今後の選択肢としてトランスの巻き替え もしくは互換トランスの載せ替え依頼を調所電器さんにトランスの修理として外注を検討しなければならないかもしれません。手作業で巻き替えを検討しましたが手巻線機も所有していません。現実には不可能と判断しました。極まれに出力トランスを自作される方もおられますが ? パワートランスを分解・手巻きは過去には経験しましたが OPTを自作する能力・技術はありません。

ウッドケースとトランス天面との間隔

Luxman MQ-60 LUXKIT KMQ-60 等に代替え搭載するときには トランス高さで 100h 以上のものはボンネットに接触しますので注意してください。
同じくSQ-38FDに搭載時 メンテナンスの時 本体出し入れ作業で ウッドケースに接触のおそれがあります。(10mmが微妙です) 取り付けシャーシー面もプレスされ意図的に取り付け寸法が数mm下げられています。出力トランス高さで105h以上は搭載不可能と思います。

テストサーキットで選別後実装
出力トランス交換後 配線接続位置が変わり元通りに接続できる配線とリード線を継ぎ足す必要があります。配線を延長にあたり熱収縮チューブとエンパイアチューブで絶縁保護が必要です。
OY15-5もどきであれば同一の配線位置となり配線延長の処理の必要はありません。

他社製代替えトランスを選択した場合などでは コスト重視、見栄え、特性重視などにより完成特性も変化します。ある程度測定機類を使える方であれば問題は発生しませんが オリジナルとかけ離れた特性のアンプに仕上がるかもしれません。
中古品のLUX OY15-5 は分解調査結果から 怖くて使えません。いまだに高額で取引されています。出力トランスはほぼ全滅に近いと思います。修復当時は正常に動作していてもいずれかは末期症状が発生するかもしれません。リスクがある中でのヒアリング これは避けたいと思います。この判断はあくまでも自己責任判断です。
新巻きトランスとして販売もされていますが購入時には巻線構造の確認をされたほうが良いと思います。まずは一次巻線抵抗値を確認すればほぼ判明すると思います。ほとんどの場合一次巻線は太くなっておりDCRの値がオリジナルの値より低くなっていると思います。オリジナルの巻線構造の新巻きのトランスはほとんど販売されていないと思います。あれば高額な特注品かもしれません。このアンプは強度のNFB回路で動作しています。オリジナルの出力トランスは一次巻線は複雑な構造であり二次側巻線4分割で組み立てられています。今一番願っているのはLUX製二次巻線が遊休巻線がない6Ωのみの現行品に使われているOYシリーズのトランスが入手できればベストと思います。あくまでも希望です。

出力管の選定及びペアリング


左端 エアー入り 50C-A10 頂部が白化 故障管
SQ-38FD_a は購入時 NEC 50C-A10 が4本実装されおり その中で1本がエアー入りと思われ真空管頂部の銀色の部分が白化しており使用不可と判断。残りの3本をテストサーキットで実働試験を実施し動作状況を記録しペアリングの資料とします。電圧増幅管はgmチェッカー(DELICA 1001)によりデーターを記録します。元に戻すときにはgmの揃っいてる真空管を選別して実装します。
出力管は手持ち複数本の手持在庫品からペアリングをして今回は1本交換、ペアリング作業で特性が合致したものを選別して実機に搭載しました。

過去の経験から 50C-A10 の故障状態はほとんどが電極タッチによる過大電流故障です。それと固定バイアスでのカソード電流値変化です。電極タッチの場合は管壁が高温となりガラス壁にクラックが入り真空度が低下することになります。真空管頂部の銀色が白化している時はエアー入り状態です。真空管内でスパークが発生しプレートが赤熱する故障状態です。保護FUSEが溶断すれば波及事故が多く発生しませんが 中途半端な故障では出力トランス焼損につながります。元々50C-A10はカラーテレビ水平出力管と同様のばらつきが多い真空管であり固定バイアスではカソードの特性違いによるアイドリング電流変化が多い真空管です。その結果安定した増幅は期待できません。特に経年変化の多い真空管であり 各個の真空管特性を選別しペアリングする必要があります。現在でも中古測定器として入手できる真空管チェッカー(TV-7D/Uなど)では動作チャート及び真空管ソケットが実装されていません。
これらの真空管特性を踏まえ 真空管試験機・装置が必要となり作成しました。真空管試験装置などで実働環境に近い 各真空管単体での実働試験をしなければ安定した初期性能を維持及び電力増幅真空管選別作業ができません。正規の真空管チェッカーを所有していますが詳細の特性はチェッカーだけでは把握できませんでした。

ISO 新タンゴ FE-25-5 搭載 SQ-38FD-b
SQ-38FD_b は購入時終段出力管が抜き取られていました。たぶん真空管だけを中古管として転売したと思います。市場には新品の NEC 50C-A10 はほとんど流通しておらず中古管がオークションで高値で取引されています。
SQ-38FD_c  については全数真空管が抜き取られており手持ちの真空管を選別して搭載修復しました。OPTが外観上修復前と同じでありオリジナルに近い修復です。おかげさまで出力管手持ち在庫分が減少し困惑しています。

今回入手困難な 50C-A10 から修復作業を実施する中で現在でも入手可能な電力増幅出力管に変更して修復作業を進めます。出力管変更に伴ない様々な問題点が発生します。





出力管ヒーター電力供給方法の考察

SQ38FDは終段出力管はヒーター電圧50V仕様であり2本直列接続として直接商用電源電圧100Vから接続されています。ヒーターの消費電力は4本で 0.175A×50V×4本=35W となり電源トランスには出力管用ヒーター巻き線がありません。LUXKIT A3500 の電源トランスに変更計画をしましたがトランスの大きさが大きくなり プリアンプ部の直流点火ヒーター電圧も違い搭載が不可能と判断しました。特注パワートランスも視野に入れましたが高額出費となりますので今回は除外としました。

出力管を 6C-A7 に選択

外付けヒータートランスの 送・受電
考察の結果 ヒータートランスをアンプ外部に設置しヒーター電力を供給することで進めます。極力外観を損なわない方法でヒーター電力を供給するとしました。
供給方法は6.3V給電の場合KT88等であれば電流値が 約 6A 以上となり供給する電線太さも大きくしなければならず 4本直列(シリーズ)接続とし 供給電圧 25.2V 供給電流 約1.5A
となり 1m程度の配線長さであれば 0.75sq の電線(汎用ACコード)でも電圧降下の影響が少ないと判断しました。現実としてAC24V汎用電源トランスでヒータートランスとして代用が可能と判断します。25.2Vに対し24Vで誤差が約5%低くなるだけで真空管の正常動作範囲になります。

汎用電源トランスの電流容量を大きくすることにより誤差電圧が小さくなります。候補としは大阪高波(INSTANT) HST-2430 24V3A(72VA) の電力容量の汎用電源トランスを使用します。ヒーター電流1.8A の出力管を使用したとしても十分実用になるトランスです。24V50VA以上あれば他社のトランスに置き換えが可能と思います。
ジャンクトランスを採用してもよいと思います。100VA-24V の汎用電源トランスです。リレーシーケンス用途が多数製造されています。鎌田信号機製トランスなどが該当します。パチンコ台の電源もAC24V仕様で古くから汎用品電源トランスが採用されていました。

ヒータートランスはアルミケース等に収納すればベストです。
見えないところに設置しますので 充電部については絶縁処理しています。むき出しでは危険ですね。
ヒータートランス 送・受電コネクター
ヒータートランスには一次側にヒューズを安全のため取り付けました。フューズは1.5Aとしました。真空管は電源投入時大きな電流が最初流れますのである程度容量値に余裕が必要です。耐ラッシュカレントに強いタイムラグヒューズであれば1Aでもよいと思いますが簡単に手に入りません。

今回採用しました 6C-A7 はトランスレスヒーター用の真空管ではありません。ヒーターにばらつきがあります。4本をシリーズ接続した場合 各真空管ヒーター電圧のばらつきを心配しましたが 測定しますと多少電圧差が確認できました。しかし 動作において問題は発生していません。又ヒーター回路の中点を接地としていますのでカソード、ヒーター間の耐圧問題、雑音の発生もありませんでした。






電力計で精密測定

今回使用した外部取り付けヒータートランスで6C-A7 を4本直列に接続。ヒータートランス単体での動作消費電力を測定。  約32W
アイドリング動作時SQ38FD_b単体 消費電力値 約100W 
電力値 合計 約130W  を観測



測定結線図







単相電力計 JIS C1102 0.5級相当

YEW TYPE 2041


おさらい

この測定器は別名掛け算器ともいわれます。交流電力を表すには P(W)=E・I cosφ の公式から電圧と電流を掛け算して力率をかければ電力値が計算できます。近年では家電商品などの消費電力を測定するのにデジタル表示の小型測定器がありますが どれだけの精度が出ているかは不明です。この測定器は骨董品ですがJIS規格品精密級 Class 0.5 の測定器です。校正証明書を取得しておれば取引証明用ともなる測定器です。




電力出力管の内部構造比較及び動作特性の比較


6J-S6A の内部構造と 50C-A10 の内部構造比較 50C-A10はビーム4極管の3極管接続です。

6J-S6-A と 50C-A10 内部構造比較

LUXMAN 50C-A10      NEC 50C-A10

ビーム4極管3極管接続
コントロールグリッド・スクリーングリッドに大きな放熱翼
スクリーングリッドとビーム形成翼(極)
終段電力出力管 50C-A10 の代替候補として現在でも流通している 6.3V 管から抽出しますと 大型出力管で定評のある KT-88 ,6550,6550A,6L6GC,6C-A7/EL34などが候補としてあげられます。現在旧共産圏の国では製造されおり将来的にも保守が可能であると思います。国産大型出力管としては 6G-B8, 8045G  などが候補としてはあると思いますが今後の入手が可能と思うものを選択しました。

ビーム形成翼はカソードに接続されており スクリーングリッドはプレートに接続されています。 多極管(ビーム4極管)、3極管接続構造の3極真空管です。

第一、第二グリッドには大きな放熱翼が支柱にスポット溶接されています。スクリーングリッド損失を大きくするため 他の真空管に比べて大きな放熱翼が取り付けられています。中央のリングは真空度を保つためのゲッターリングです。

ビーム出力管独特のコントロールグリッドとスクリーングリッドの格子ピッチが揃えられています。

各電極構造 上 6J-S6-A 下 50C-A10
上段が 6JS6-A  下段が 50C-A10  電極内部構造の比較 目盛は5mmピッチ

左端よりヒーター(H)、カソード(K)、コントロールグリッド(CG,G1)、スクリーングリッド(SG,G2)、ビーム形成翼、プレート(P) の各部の部品構造となっております。多少の大きさは異なりますが各部品を見ると非常に似通った構造となっています。ビーム形成翼の位置に5極管の場合ですと サプレッサーグリッド(抑制格子、G3)と呼ばれる電極が取り付けられます。今回分解した6J-S6-AFT-101無線機に搭載していました不良品の電力増幅終段管です。プレートに放熱効果を上げるために鉄板が追加取り付けしてあります。正式名称は6J-S6C と思います。
(小生は ビーム形成翼 と表示しましたが他の文献などは ビーム形成電極 との表示もあります) 

動作原理については様々な解釈があり ビーム5極管と呼ばれたりビーム4極管など解釈により呼び方が違ってきます。又ビーム形成翼をシールド板との解釈があり電極として勘定されていません。よく観察をしますとコントロールグリッドに金メッキが施されていると思います。小生の場合は 50C-A10 はビーム4極管の3極管接続真空管と解釈しています。6B-M8を分解しますとサプレッサーグリッドがありません。ビーム形成翼が取り付けられていますが 真空管規格表には5極管に分類されていました。ビーム管、5極管の扱いには微妙な解釈違いがあります。

代替え真空管として 6C-A7/EL34 を選択

6C-A7/EL34 はヨーロッパ生まれの5極管構造であり 6L6GC のようなビーム形成翼がありません。第3グリッド(サプレッサーグリッド)が取り付けられており 単独電極として口金に取り出されています。通常使用の時にはカソードとG3(サプレッサーグリッド)を真空管ソケットで接続して使用します。内部構造を見ますとグリッドピッチが揃えられており カソードも扁平に近い構造となっていますので ビーム管構造 と見受けられます。昔から多種、多用途管として 内外各社真空管ステレオアンプ、プロフェッショナル仕様PAアンプ等に数多く採用された実績があります。使いやすい真空管です。使用条件により第2(SG)グリッドが赤熱しやすいため スクリーングリッド損失には注意が必要です。(マランツ8Bパワーアンプ、Luxman

今回選択した出力管は 6C-A7 三極管接続(トライオードコネクション)としました。最大出力を考えればUL接続も検討しましたが出力トランスがOY15-5に比較して控えめな力量の出力トランスを選択しているため電力を犠牲としました。LUXKIT A3500では6C-A7が五極管接続の場合は最大出力が40Wと記載されています。6C-A7は細管で 6550Aに比較して小振りであり 今後長期にわたって使用することを考え選択しました。能率のよいスピーカーシステムでは大電力アンプは不必要です。家庭内で音楽を再生するにはスビカーの能率がよければ出力10W前後もあれば満足できます。
現行品の真空管アンプには6C-A7が多用されおり今後の保守管確保も見通しが明るいです。

東芝 6G-B8 とTANGSOL 6550
松下 6C-A7   GE 6550A
松下 6C-A7  GE 6550A  比較検討

6.3V 1.5A     6.3V  1.8A   ヒーター規格
25W            42W           プレート損失
8W              6W            スクリーン損失
800V           660V          Ep Max
425V           440V          Esg Max      

6550 は だるま型の外形
6550/6550A は KT-88 同等管
三極管接続の場合はEsg最大電圧を超えてはならない設計とする。

50C-A10  コンパクトロン管 オーディオ出力管 (3極管)
最大プレート電圧 450V  プレート損失 30W  ヒーター電圧 50V  電流 0.175A
動作例
Ep 250V Eg -22V rp 570Ω μ 8 RL 1.5KΩ Ip 80mA  out 6W  バルブ形状 T38-90

6J-S6C  コンパクトロン管12FV カラーテレビ水平偏向ビーム出力管
最大プレート電圧 990V プレート損失 30W  スクリーン電圧 220V  損失5.5W
ヒーター電圧 6.3V 電流 2.25A  最大スクリーン電圧が低いため三極管接続は不可

6C-A7 オクタルベース8EP GT 5極管 3極管接続時のデーター
最大プレート電圧 800V プレート損失 25W スクリーングリッド電圧 425V  損失 8W
ヒーター電圧 6.3V  電流 1.5A
三極管接続時動作例 A1動作                  (Eg1-k  -25.9V)
Ep 375v カソード抵抗 370Ω RL 3KΩ Ip 70mA  out 6W  (G2はPに接続、G3はKに接続)

今回 6C-A7 3極管接続動作にしましたので LUXKIT A3500 マニュアルと同様に 出力管各プレートと各スクリーングリッドの間に 100Ω 1/2W の抵抗を新設します。

電力出力管の選別(ペアリング)


今回採用した Wwstinghouse 6CA7
使用した真空管 6C-A7 は以前12本まとめ買いし 保管してあった Westing house 製です。 管壁記載は 6CA7です。ヨーロッパタイプでスリムな細管です。ペアチューブではありません。自作テストサーキットに1本づつ動作試験を実施しました。 A級動作状態で THD3% 出力電力値、バイアス電圧、カソード電流値、P-K間電圧、スクリーン 電流値などを記録します。
12本から測定したデーターの近いものを選別し ペアリングしました。誤差が少なく特性が似ていますとDCバランス調整VRがほぼ中央でバランスが取れます。真空管特性が違っているとDCバランスVRで偏った位置で2本とも同電流値に調整は可能ですが 最終特性を見てみますと多少測定結果が悪くなるのが確認できます。
真空管は特性の揃ったペアチューブを用いないと良い結果は出ません。ペアチューブの購入もしくは 自己で複数本からペアリング選別作業が必要です。

自作真空管試験器・装置の詳細内容及び国産gmチェッカー DELICA 1001 試験内容なども含め musenan05.blogsport.com  参照してください。ブログ末尾には 真空管規格表を整理して記載しています。当時発表された真空管規格表の詳細DATAを整理して記載しました。昨今となれば 50C-A10 などの詳細な真空管規格DATAが簡単に見つかりません。骨董品である真空管規格表の分散された紙資料など自分なりに整理し 忘備録デジタルデーターとして作成ました。

6C-A7 三極管接続に変更した結果 最大出力は低下します。能率の悪いスピーカーシステムの方にはおススメできません。小生宅のスピーカーシステムの能率は 95dB,101dBあり 数Wのアンプで十分ドライブできます。現在市販されている半導体アンプ出力100Wなどの機器は不必要です。

SQ-38FD外付けヒータートランスの受電、送電部の加工

外付け電源トランスは後部パネルにあった 上側SWITCHEDのコンセントを除去し小判型のコンセント受け口を取り付けAC24Vの受電とします。又その受電口下部のコンセントに外付け電源トランスのAC100V給電用プラグを取り付けます。SQ38FDの電源スイッチと連動しているためヒータートランスの電源制御ができます。
下記 MQ-60,KMQ-60 の外付けヒータートランス取り付け作業説明に記載している4P メタルコネクターの新設でも良いと思われます。取り付け加工場所としてはヒューズホルダーの横ぐらいしかありません。本体後部の機器用コンセントはそのままとなります。
(SQ-38FD 加工状態は 本体後面パネル部の写真を参照)

MQ-60,KMQ-60,MQ-60Cなど外付けヒータートランスの受電、送電部の加工(案)


LUXKIT KMQ-60

MQ-60,KMQ-60 等は ヒータートランスを外付けとした場合 4Pメタルコネクターを新規取り付け加工し AC100V出力、AC24V入力となるように配線加工しますと便利です。SQ-38FD と同様な改修ができると思われます。接続電線としては1m程度であれば VCTF 0.75sq 4芯コードで接続すれば同等の配線となります。
又回路構成は LUXKIT A3500 に似通った 6C-A7 3極管接続アンプ又はUL接続アンプ回路となります。

添付されていた組み立てマニュアル
メタルコネクターの選別として ヒロセ電機 HS16P-4(71) とHS16R-4(71) の組み合わせ又はHS16P-4(71) とHS16J-4(71)の組み合わせで良いと思います許容電流は 7A となっておりヒーター電源回路に応用できると思います。接続電線を本体とヒータートランスとの直結又は本体部接続、トランス部接続、VCTFコード中間接続の選択は各自の判断で加工してください。
接続VCTFコードと本体とを直結の場合 本体の移動、保守の時にひも付き状態となりますので使い勝手が悪くなります。
本体にメタルコネクターのレセプタクルを新規取り付ける場合はヒューズホルダーと電源コード引き込み付近ぐらいしか設置できる場所はありません。銘板が隠れてしまいます。コネクターはメスのレセプタクルが無くコネクター部の一部が露出しますので感電する可能性があります。コネクターを外し通電した場合には注意が必要です。







発売当時の製品カタログ


LUXKIT KMQ-60 の蘇生・オーバーホール

現在所有しています KMQ-60 は出力管 50C-A10 を使って動作しているため 真空管の変更は実施していません。タムラ F-683のトランスから出力トランスは OY15-5もどき(ノグチPMF28P-5K内蔵) を搭載して実働しています。

OY15-5もどき搭載

作成後約45年前後経過しているため回路部品の交換作業を実施後正規アイドリング・DCバランス調整をしています。上記画像ではボンネットを取り外した状態で撮影しました。

改修完了したアンプ内部
カソード抵抗新設 DCバランス調整VR

今回出力トランスに OY15-5もどきを搭載しましたのでマニュアルに記載している調整で出力トランス一次巻線の直流抵抗に発生する電圧での調整ができません。出力管は各カソードとアースに接続していましたが カソードとアース間に 10Ω1/2W型金属皮膜精密抵抗4本取り付けました。この抵抗に発生する直流電圧を電流に換算して調整します。組み立て調整マニュアルから算出した電圧を各出力管カソードに新設した抵抗に発生する電圧 DC 0.5V に調整しました。
アイドリング電流調整後は新設した 10Ω 4本に各発生する直流電圧はすべて 0.5V となります。この状態がDCバランス・アイドリング電流が調整されたときの値です。

ラックスキット KMQ-60 組み立てマニュアルからの調整電圧が基本となります。出力トランスの直流抵抗値計測結果から カソード電流を計算すると1本当たり48mAと答えが導けます。測定器・部品の誤差を甘味すればおのずから ±5% が最適調整値と判断します。最悪±10%までの許容差は合格とします。これを電圧にあてはめますと 0.45V~0.55V と判断できます。真空管特性のバラツキにより この電圧は時間とともに変化しますので最低30分以上経過した安定状態で調整しなければなりません。これらはあくまでも個人的判断です。

SQ-38FD  調整値については上記内容により個人的な考察から得た結果での調整です。

バイアス電圧調整用VR
修理・調整作業においてオリジナルと違った調整をされる諸先輩方も見受けられます。真空管の延命処置と思われますがアイドリング電流を絞っている調整もあります。このSQ-38FD などでは AB1級 動作ですが アイドリング電流を絞ることにより動作点が AB2級に移行することになります。電流を少なくすることは真空管バイアスを深くすることになります。通常フルパワーで動作させない家庭内での運用であれば 数W程度の出力しか出ていません。このような動作であればアンプは A級プッシュプル回路で動作していることになります。パワーが出ると B級動作領域になるわけです。数W出力の場合 歪の少ない・音質的にも良いといわれる A級プッシュプル動作範囲が好ましいわけです。個人的な感覚となりますのでご判断ください。

KMQ-60 は SQ-38FD のメインアンプ部の初段真空管は 6267/EF86 でありほとんど同じ回路構成三極管接続です。その結果 SQ-38FD の調整マニュアルは入手できていませんが KMQ-60 調整マニュアルを基本として調整しています。LUXKIT A3500 ではメインアンプ初段管は 6A-Q8 三極管です。

出力トランスの載せ替え作業に加え 各部品のオーバーホールを実施しました。交換した部品として SQ-38FD と同様であり下記に記載しているオーバーホール作業です。違う点は入力端子(RCA端子金メッキ品)、スピーカー接続端子 です。カップリングコンデンサーは汎用フィルムコンデンサー(MF)にオイルペーパーコンデンサーは全数交換しました。もちろん信頼性のない半固定VRも交換しています。

SQ-38FD その他、回路部品のオーバーホール


SQ-38FD-b 6C-A7 仕様
保守にあたり今後の機器安全性、安定動作を考慮し 結合(カップリング)コンデンサー、カソードバイパスコンデンサー、半固定抵抗器はあまり信頼性がありませんし約40年経過していることを考えると現在供給されているフィルムコンデンサー、電解コンデンサーに交換します。諸先輩方はコンデンサーの銘柄にこられる方がおられますが 国産の汎用フィルムコンデンサー、電解コンデンサー(105℃)に交換します。半固定抵抗器も曲者で特にバイアス調整用のSVRは国産の良質NEOPOT型に交換します。半固定抵抗器で安定していると思われる部品は 日本電産コパル製 RJ-13型(サーメットトリマ)タイプが最適と思います。精密測定機器に多用されています。ちょっと高額であるのが難点ですが品質は良好です。電源フィルター電解コンデンサーは点検しましたが電解液漏れもなく容量値変化も少なく現有品を使用しました。
各スイッチ、VRは多少ノイズが発生しておりましたが 接点復活剤などを使用して 運用に差支えがないため 現有品を使用です。SQ-38FD_c については軸の動きがスムーズではなくアルプスの2連250KΩディテンドVRに交換しています。
真空管ソケットにおいては ショックテストで良好であったため 歯間ブラシ等で清掃のみとしました。固定抵抗器も一部交換しています。以前の所有者がヘッドホーンを多用されていたと思います。ヘッドホーンに直列に接続されている 470Ω1/2Wが変色しており抵抗値の変化はありませんでしたが取り替えています。特に抵抗器の場合変色している時は長時間過大電流が流れた証拠です。目視点検も重要な修理作業における要素です。抵抗値高化に至る前の現象です。

SQ-38FD-b で交換した部品

真空管アンプ専門修理業者の中には 手あたり次第に部品を新品に交換される業者の方も見受けられます。各交換した部品の交換理由の詳細はほとんど説明されていません。今後壊れる可能性があるため交換しました程度の説明です。過去からの経験による診断と思いますが? エンジニアではなく部品チェンジニアの仕事とも取れます。某メーカー製量産品システムコンポステレオなどでは電解コンデンサーの容量抜けが多発している場合もあります。製造当時コストダウンした結果 海外からの輸入部品仕様 某コンデンサーメーカーの品質が悪いため 購入後数年間使用すると多発する故障です。今回交換した部品の良否を測定しましたが 個々部品の精密測定において 容量値・動作電圧での漏れ電流測定などをしましたが不良品の数は多くありません。LUXでは製造当時信頼性のおける部品を使っています。支障のない部品は手間をかけてまで交換しません。ただ過去からの経験と不良率の高い部品を選別して交換しています。無闇には交換はしません。今後の安全性・信頼性を向上させるためです。

カップリングコンデンサーの良否判定

コンデンサーの良否判定 正常状態
コンデンサーの良否判定 リーク状態
カップリングコンデンサーの漏えい電流試験は通常のテスター抵抗レンジによる良否判定は測定できない場合がほとんどです。実働している電圧の環境下でコンデンサー両端に印加して漏れ電流を計測しなければ良否判定はできないと思います。なぜならテスターに内蔵しいてる抵抗値測定用電池の電圧が低いのと 表示する電流計の感度が悪いためです。測定用に使っているYEW3201型回路計ですら内蔵電池は1.5Vですので漏えい電流は計測できません。

漏れ電流計測であれば絶縁抵抗計が最適と思われる方も存在すると思います。しかし通称メガーではDC500Vメガーが一般的です。当時のコンデンサー類の耐圧は400WVが数多く規格オーバーとなり正確な判断ができません。計測する場合コンデンサーの耐圧電圧程度に合わせて計測するのが最良と思います。
仮に500Vメガーでの計測の場合 例として50MΩ の表示であれば オームの法則により漏れ電流は 10μA です。通常正常なコンデンサーの場合 最初メーターの針は振りますが徐々に ∞ (無限大)表示となれば正常です。

左図は位相反転段に使用されていたMPコン 0.47μF 300WV(メタルライズドペーパーコンデンサー)の良否判定測定です。上段は正常値を示しているコンデンサーです。コンデンサーには安定化電源より直流 約28V を接続しコンデンサーに直列接続で高感度電流計を接続します。最初はコンデンサーに充電電流が発生し針が一瞬触れますが時間の経過とともに電流が流れなくなります。メーターレンジは12μA/fsレンジであり漏れ電流は発生していません。
このように比較的高感度の電流計(12μA/fs)を搭載している回路計を使用していますので数十Vの電圧であっても漏えい電流は計測できます。感度の悪い回路計などではもう少し高い電圧を印加しないと判別できないと思います。
下段は同じ容量のMPコンですが時間が経過しても一定の電流が計測できます。レンジが120μA/fs レンジで 約56μA を示しています。時間経過しても針の指示は変化がありません。これがコンデンサーのリーク状態です。もしも終段管のカップリングコンデンサーであれば前段のプレート電圧が 約300V  とするとコンデンサーからの漏れ電流により 出力段の真空管バイアス電圧が正の方向となりプレートに過大電流が流れる結果となり真空管が赤熱します。
この故障が怖いのです。交換したカップリングコンデンサーをこのようにしてチェックしましたが不良品はこのコンデンサーだけでした。カップリングコンデンサーの場合数μAの漏れ電流があれば不良品です。やはりMFコンデンサーは漏れ電流の故障は発生しにくいと思います。しかしリークの故障は経験しています。
DC:300V前後の電圧で漏れ電流を測定する場合 測定器である電流計保護のため100KΩ程度の抵抗を直列に挿入し計測することをお勧めします。何故というと電流計(回路計)保護策として接続時のラッシュカレント(突入電流)を少なくするためです。もしもコンデンサーがショート状態であっても測定時流れる電流は3mAしか流れません。μAを計測する高感度電流計を保護するためです。
電解コンデンサーは正常なコンデンサーでも若干の漏れ電流は発生します。良品のコンデンサーと比較するのがベストと思います。電解コンデンサーには極性があり間違った接続となった場合漏れ電流が多くなり発熱によるコンデンサーがパンク(破裂)することもあります。

今回実働電圧に比較して低い電圧で試験しましたが 実働電圧付近でので測定するのも得策と思います。その場合は高電圧を発生する装置が必要となります。コンデンサーには使用できる電圧が記載されています。WV(ワーク・ボルテージ)の表示でありこの電圧以下で使用しない場合コンデンサーが故障するという最大電圧(耐圧)が記載されていますので厳守しなければなりません。
例 MF 0.1μF 630WV の表示であれば 耐圧は630V で容量値 0.1μF メタルライズドフィルムコンデンサーと判断できます。WVの後 DC もしくは AC の表示がある場合もあります。使用する回路が交流回路か直流回路かを表します。

今は入手不可能なペーパーコンデンサー類

上図は保管品およびSQ38FDに使われていたペーパーコンデンサー類です。ペーパーコンデンサーですが品種は3種類あります。通称オイルコン、オイル含浸ペーパコンデンサーは上段の黒色です。右側は 通称MPコン メタルライズドペーパーコンデンサーで 下段は未使用保管品ルビコン製のペーパーコンデンサーで耐圧は400Vです。

過去からのコンデンサーの推移を見ますと 60年ほど前の真空管式ラジオ・テレビではペーパーコンデンサー 電極間には紙を絶縁体としてアルミ筒にゴムで封止したコンデンサーでした。その後 絶縁体の紙にオイルを含浸したオイルペーパーコンデンサーとなります。その含浸するオイルに絶縁特性の良い PCB(ポリ塩化ビフェニール) を使ったコンデンサーもありPCB回収対象品です。当時のラックス社真空管アンプでは通称オイルコンとMPコンが使われています。MPコンデンサーとはメタルライズドペーパーコンデンサーです。絶縁物の紙に金属箔を巻き付けた構造ではなく 絶縁紙に金属を蒸着した構造で もしも漏電時はその個所を自己修復するとの売り文句でしたが疑問があります。電力を扱う箇所でのMPコンデンサーでは火花が発生することもありました。発煙事故です。その後絶縁物にプラスチックフィルムが使われ高耐圧品の MFコンデンサーが登場します。金属化紙ではなく金属化フィルム構造です。
現在補修用途のコンデンサーとして信頼性も高まり MF型コンデンサーを使うことが多くなりました。絶縁体として高耐圧コンデンサーでは耐熱性に優れたポリプロピレンフィルムが使われます。
又MF型コンデンサーでも絶縁物の種類によりさまざまなフィルムが使用されており低電圧のトランジスター回路用 絶縁体フィルムとして マイラー(ポリエステル)フィルム・スチロール樹脂フィルム(スチコン)などがあります。このコンデンサーはトランジスターラジオなどに数多く採用されました。しかしこれらのフィルム材質では高耐圧製品はありません。高々耐圧は100V未満です。高耐圧ではマイカ(雲母)シートに電極を蒸着したシルバードマイカ・ディップマイカコンデンサーがあります。特にイコライザー・NFB回路の小容量コンデンサーです。

追記 2021/08/31
現在購入可能なカップリング用途の MF型フィルムコンデンサー


上図中央上部黄色のMF型コンデンサーは 先日 自作品常用メインアンプ 3C33p-pを調整・修理をした時に交換したフィルムコンデンサー0.1μ TOWA製です。約DC300Vの直流電圧を加えて漏れ電流を測定しました。一番悪い数値は漏れ電流 2.6μAを測定し 他のコンデンサーでも1.2μAを測定しました。良品のコンデンサーでは漏れ電流は観測できません。このコンデンサーは電力増幅管のグリッドとドライブ管プレート間に接続されているカップリングコンデンサーです。このコンデンサー両端に加わる電圧として400V以上の電圧が加わる個所です。SQ38FDの場合通電直後真空管に電流が流れない時には ドライブ管プレート印加電圧約450Vと電力増幅管固定バイアス電圧約-50Vですので 約500Vがコンデンサーに加わります。となるとコンデンサーの耐圧は630WVを使わなければなりません。400WVでは耐圧不足です。
交換したコンデンサーに記載されている表記は 2J104K と記載されています。この記載事項を理解しないことにはコンデンサーの素性が判りませんね。保管品、指月製 汎用フィルムコンデンサーでは コンデンサー容量 2.2μF 誤差±10% 耐圧400WV と直読できるのですが今回交換したコンデンサーでは詳細は判別できません。
下図は指月のホームページより入手した記載事項の判別方法です。
2J104K とは 2J は 一番下の数字とアルファベットの組み合わせ図を参照すると 数字 2の欄と J のアルファベットの交点を読むと 630Vと判明します。104の数字は容量値の表示であり 0.1μF と判明します。アルファベットの K はこの表には記載されていませんが 抵抗器と同様誤差を表します。許容誤差±5%(金色)は J を表し K は±10%(銀色)誤差を表します。以上の結果から交換したコンデンサーは TOWA製 0.1μ 630WV ±10% のフィルムコンデンサーと判明しました。
AC耐圧ではDC耐圧とは異なり表記事項が異なります。注意してください。AC耐圧表記のコンデンサーでも真空管アンプには使用することは可能です。その場合DC耐圧に変換しなければなりません。250VAC耐圧であれは630VDC耐圧と同等と思います。125VAC耐圧は300VDC強、耐圧ですので使用する際には回路設計にご注意を。2Eと記載されている場合下部の表から読み取れば耐圧は250Vです。


今回修復に使用した汎用コンデンサーは 現行品エポキシ樹脂でコーティングされた絶縁性の良い 上記画像では緑色のコンデンサーです。ルビコン製メタルライズドポリプロピレンフィルムコンデンサーです。購入した品種は現在数多く製造されているインバーター回路などに使われるパワーデバイス用途です。オーディオ専用品ではなく汎用品です。小生の耳は良くありません。凡人です。音楽専用高額なマニアご用達品コンデンサーは使いません。どこかの悪態をつく 評論家連中・教祖様 のように音の違いが判りません。物理特性ではほとんどの場合判別できません。個人的な趣味の世界、道楽ですから ! ! !

今回保守保管品として新規購入したコンデンサー類は 下段左から 
0.1μF/630WV/±5%(104J2J) , 0.1μF/450WV/±5%(104J450) , 0.047μF/450WV/±5%(473J450) , 0.01μ/630WV/±5%(103J2J) ,
0.022μF/630WV/±5%(223J2J) のコンデンサーも購入したかったのですが販売店のリストには無く諦めました。後、数種類のコンデンサー類を揃えれば真空管式アンプ修復・組み立て作業には十分と思います。又耐圧についても DC:450V以上です。大量生産品、パワーデバイス用途品ですが真空管アンプ用途としても最適であり しかも安価なコンデンサーと思います。
(追記文末)

LUXの真空管アンプで怖いのはコンデンサーで容量抜けは別として カップリングコンデーンサーリーク(漏電)とバイアス・DCバランス調整用の半固定VR不安定が一番怖い部品の故障です。波及故障で高額な修理費用が発生します。LUXでは当時採用された安価な半固定VRの選択は間違っていると思います。量産品真空管アンプ製造コストを重視した結果かもしれません。自作のアンプでは高額となりますが信頼性のある通測用密閉型のVRを使用しています。今となっては入手困難な 50C-A10 大切な真空管の破損、出力トランスの焼損する事もありえます。この症状が今後発生しにくくなるように 安全性・信頼性を確保するためです。機械である以上故障しないとは断言できません。

フィルター電解コンデンサーを必ず交換される方も現実にはおられます。耐圧500V/DCのコンデンサーは信頼性の高い国内品はほとんど入手できません。高圧の直流電圧を加えリーク電流の試験をしますがほとんどは正常です。容量値も大きく変化していません。この点検結果から高電圧フィルター電解コンデンサーはほとんど交換はしません。もしも今後パンクなどの故障が発生しても 出力管、OPT程高額な修理費用は発生しません。発生都度修復予定です。ただ電解コンデンサーは経年劣化が発生する部品です。米軍コリンズ製の受信機 R390A で電源フィルターブロック電解コンデンサーの不良も経験はあります。高砂の産業用直流電源装置ではフィルター電解コンデンサーは消耗品として扱われ 信頼性確保のため定期的に交換するように推奨されています。現実には電解コンデンサ-の不良も経験しています。ニシム製(ニシム電子工業)の大型UPSでも定期的に電子部品はメンテナンス業務として交換をします。業務用機器は別として道楽での真空管アンプではここまで産業用機器のように電子部品を定期的に交換する必要はあるのでしょうか。各自の判断とします。
なお国産の信頼性の高い高電圧電解コンデンサーとしてはインバーター制御用として400WV程度の良質のコンデンサーは多数製造されており無理に海外製品の500WV耐圧のコンデンサーを使用しなくとも直列接続として高電圧のコンデンサー回路も作成可能です。

通常メーカーサービス・専門修理業者にオーバーホール・修理依頼となりますが 各個人が判断することです。誰であっても修理完成後 購入当時とほぼ同額の10数万円を突然請求されたら修理依頼者としてはどう判断されますか? やはり修理依頼される場合は自己で修復するのと違い 業者と完成度のすり合わせをしないと修理価格面で問題が発生します。修理依頼者は問題発生を回避するためにも注意・業者を選択する必要があります。高額な修理であっても依頼者が納得した場合トラブルは発生しません。ジャンク品などを購入して業者に修理依頼した場合 今回の複数台修復結果から機器購入費を含めると最低10数万円は覚悟しなければなりません。主要部品購入額、人件費を計算するとおのずから判断できます。道楽作業でSQ-38FDを修復しましたが新規購入部品代として結構費用が発生しています。使用されている部品の中でも修復に必要な代替品を探すとしても 高額な出力トランス(OY15-5)・出力管(50C-A10)の調達費用です。

パネル等の金属部については ワックス等の油脂を塗布し防錆処理としました。
木製キャビネットの細かな傷などは補修塗料等でタッチペイントして目立ちにくくしました。木製キャビネットで欠けたところは木工用エポキシパテで修正後周辺の色合いより少し暗い目の修正塗料を塗布ました。明るい修正では目立ちます。


機器の調整・測定・確認

準備する測定機器としては最低回路計(テスター)を準備ください。安価な中国製千円以下で購入可能なハンディータイプのデジタルテスターですら自己校正しましたが精度は出ていました。もしも準備できるようであれば 安心できる作業としてテスター以外にオーディオ修理・調整に必要な 三種の神器 があればベストです。オーディオにおける 三種の神器 とは オシロスコープ・低周波発振器(オーディオジェネレーター)・ACミリボルトメーター(ミリバル)を言います。

今回の修復においてNFB定数等、回路変更箇所は発生しませんでした。L-ch,R-chステレオ機器ですので同じ回路が2組あります。各部の電圧測定では ほぼ同じような電圧が観測出ると思います。極端に違っている場合(10%以上の誤差)は細部にわたり点検しなければなりません。真空管のエミ減かもしれません。同じ品種の真空管が使われており 差し替えて点検するのも良いと思います。

又機器内部には高電圧の箇所があります。最大DC450V程度ですので感電事故には注意してください。不安定な状態ですと人身事故の可能性もあります。感電でびっくりした時 反射的に回避行動でけがをする場合があります。各部電圧測定時高電圧回路での短絡(ショート)事故の無いように慎重に願います。悪い条件が重なれば 最悪死亡感電事故もありえます。心臓に数10mA以上電流が流れれば心肺停止となります。安全作業をお願いします。

動作テスト前の注意事項


修復完了後動作テストのため通電する場合 電源投入前に修復した場所など細かく目視確認、回路計による導通、絶縁試験をしてください。出力トランス交換した場合 NFBがPFBとなって発振のおそれがあります。必ずスピーカー端子には擬似負荷を接続してください。異常が認められるときには電源を切り不良個所の修正してください。SQ-38FD_c は異常発振してしまいました。

DCバランス、アイドリング電流調整方法については マニュアルを参考にして調整してください。
 LUXKIT KMQ-60 マニュアル(7.8V~8.2V)、LUXKIT A3500 マニュアル(6.5V~7V) 6C-A7 三極管接続の項目等を参考とし アイドリング電流値を計算確定します。又50C-A10,6C-A7真空管規格表も参考にします。
参考として 6C-A7 UL 接続の場合の調整電圧値は LUXKIT A3500 マニュアル(7.8V~8.2V)になっています。これらの電圧調整値よりカソード電流を計算することが可能です。




DC(直流)バランス調整   


測定器 オシロスコープ HP 1202B
     
LUXのマニュアルによればバイアス調整はOPT一次巻線抵抗に発生する直流電圧で調整するように記載されています。今回出力管各カソードとアース間に 10Ω1/2W の固定抵抗器を新設します。誤差の少ない精密抵抗器を使用されるのが最適です。(金属皮膜精密抵抗器1%誤差 茶・黒・黒・金・・茶)

水色 金属皮膜精密抵抗 1/2W型 誤差1%
もしも精密抵抗が入手できない場合は±5%誤差抵抗から複数本より精密測定器で選別後使用するのも一つの手法でおすすめです。1%以内の誤差まで選別することも可能です。近年の国内測定器メーカー製デジタルマルチメーター(回路計)はアナロクテスターに比較して精度がよくなっています。横河、日置、三和などのハンディータイプ・デジタルマルチメーターであれば精度は出ていると思います。
小生の場合は据え置き型となりますがADVANTEST R6551 もしくはDELICA 1100 インピーダンスブリッジを使用して精密測定します。

抵抗に消費される電力は抵抗に100mA流れたと仮定するとオームの法則により  w=I・I・R   w=0.1×0.1×10=0.1 ∴ 0.1Wの電力が消費します。抵抗器は電流による発熱により抵抗値が変化する性質があり 使用する抵抗は1/2W型以上を使用することをお勧めします。10Ω抵抗でのアイドリング電流値としては50mA以下ですので1/4W型でも問題は無いと思いますが安定性、安全性を考慮します。(50mA時消費電力値は 0.025W)
DCバランス・バイアス調整
新設したカソード抵抗はY型となっており抵抗にテスト端子を設置します。片側の抵抗に直流電圧計を設置し各カソード間に直流電圧計を設置します。カソード間は零ボルト、10Ωに発生した電圧値で適正バイアス電流を各チャンネルごと交互に調整し 指定電流値に調整します。測定器が一台の場合は適宜測定リード線を変更して測定してください。小生の場合 DC:0.3V,DC:1.2Vレンジで測定します。電圧値の変化はシーソーのような動きとなります。電圧計は複数台数での測定することにより調整作業がはかどります。デジタル回路計測定でも調整は同様です。小生の場合精密測定用として据え置き型デジタルマルチメーター ADVANTEST R6551 などを使用して調整します。調整はL-ch,R-ch交互にカソード電流値(電圧値)、バランス状態を調整してください。測定器として誤差の少ないアナログテスターであれば問題はありません。写真のごとく2台のアナログ回路計でアイドリング電流・DCバランス調整しました。
アイドリング電流値として 50mAの場合 10Ω抵抗に発生する電圧は 0.5V の電圧が発生します。両抵抗器に同じ電圧が発生すれば両カソード間の電圧は零ボルトとなります。この時に真空管1本当たりの入力電力は約21Wとなります。プレート損失が30Wですので余裕のあるアイドリング状態です。出力管全体ではアイドリング状態時約120Wが熱源として発生していると計算できます。放熱に注意しましょう。


出力管各動作損失の確認


出力管プレート電圧とカソード電流値で真空管に入力される電力を計算します。真空管規格表に記載されている値の プレート損失、スクリーングリッド損失 以内で動作しているかを確認します。
6C-A7 3極管接続時のスクリーングリッド損失測定は プレートとスクリーングリッド間に挿入された 100Ω1/2W (金属皮膜精密抵抗器1%誤差 茶・黒・黒・黒・・茶) 両端の電圧を測定し電圧値からの電流と スクリーン電圧を計算し スクリーングリッド入力電力を計算します。スクリーン損失以下であることを確認します。動作例として100Ωに 5Vの電圧を観測。オームの法則によりスクリーングリッド電流は5mAとなります。スクリーングリッド電圧を掛け算すると約2.1Wとなりスクリーングリッド損失8W以下であり安全動作範囲を確認しました。
50C-A10の場合はスクリーングリッドが無いため プレート電圧とカソード電流値から計算し 入力された電力値がプレート損失値以下であることを確認します。50C-A10は多極管の3極管接続の真空管です。コントロールグリッド、スクリーングリッドに大きな放熱翼が取り付けられており スクリーングリッド損失は明記されていませんが 約10W前後と推察できます。

低周波発振器(オーディオジェネレーター)からの信号によるテスト              


正弦波入力による動作テスト   
                     
目黒 自動歪率計 MAK-6571A
アイドリング電流の調整後 1000Hz の正弦波を接続し物理的性能のチェッをします。ダミーロードは自作測定治具です。又歪率測定などに使用するためのテストポイントも取り出してあります。治具内部に 8Ω,30W のホーロー抵抗器を4本 搭載しました。無誘導巻きの抵抗ではありませんが測定自体低周波(AF)ですので測定誤差はほとんど発生しません。通常セメント抵抗であっても低い抵抗値であれば抵抗体をコイル状に耐熱絶縁物に巻いてあります。高額なメタルクラッド抵抗であっても内部構造はよく似た作りです。スピーカーのボイスコイルまでのインダクタンス分はありません。高周波(RF)を扱う場合 巻線抵抗は使用することができません。
抵抗器を直列接続時は 16Ω,60W  の擬似負荷。並列接続時は 4Ω,60W になります。単体 8Ω抵抗器のみの接続とすると 8Ω,30W のダミーロードとして動作するように タイト製ロータリースイッチで負荷インピーダンス値を切り替えます。L,Rチャンネル同時擬似負荷として運用できます。通常16Ωの抵抗として測定します。4Ω、8Ωは動作確認程度です。

自作 疑似負荷(ダミーロード)
擬似負荷(ダミーロード)治具内には 約50mm直径のトランジスターラジオ用小型 8Ω200mW のスピーカーが2個内蔵してあります。ダミーロードに並列配線とし スイッチ動作により測定モニター音の確認ができます。スピーカーには直列に200Ωの固定抵抗を挿入してあり モニター入、切 操作をしても負荷インピーダンスの変化は無視出来る範囲となっています。モニターしながら測定しますので周波数間違いや歪などが耳から情報として入ってきますので使いやすい測定治具です。モニタースピーカーの入・切操作をしても測定値変化を無視できるほど 極小さい値で動作します。


THD とは 全高調波歪率 (Total Harmonic Distortion) のことを言います。
高調波には 偶数次高調波、奇数次高調波、全高調波 などに分類されて表現されます。現在では オーディオアナライザー、スペアナ、TFT解析などにより測定方法は他種類存在します。昔はアナログで各高調波 N次高調波dB値をN次毎に測定し計算式に代入して計測しておりました。少し古くなりますがアナログ、フィルタータイプの自動歪率計での測定が比較的簡単です。歪率計の動作原理及び高調波理論については 他の文献等を参照してください。ノイズ・メーターとしても測定する場合があります。


最大出力電力値および歪率の測定


波形観測
SQ-38FD_a 出力管 NEC 50C-A10    16Ω負荷 実測 30W THD3% 1000Hz




SQ-38FD_b 出力管 W,H 6C-A7        16Ω負荷 実測 20W THD3% 1000Hz




小生の場合は歪率計のフルスケール3%値時 電圧計の表示を読取 擬似負荷抵抗値の値で電力値を計算しています。オシロ画面での3%歪の時は 正弦波先端波形上下がつぶれかけるのが確認できます。シングル増幅回路の場合 同じ3%歪の波形を比較するとプッシュプル回路のほうがはっきりとした波形違いが観測できます。リニアリティーがよいからです。

個人的な見解により アンプの歪率3%を最大出力電力値としました。基準歪率値が変われば当然電力値の値も変わります。最大出力が表示してあるときの歪率も見ないと数字のマジックでごまかされてしまいます。真空管アンプの時には3%歪はあまり耳障りとはなりません。感覚ですので各個人でのばらつきは発生すると思います。

歪率測定
SQ-38FD_a 測定結果
測定値 レベル計表示  22.5Vrms
            歪率計表示   3%
擬似負荷インピーダンス 16Ω

上記より出力を計算すると W=I・E=E×E/16Ω より  31.6W 観測しました。片チャンネル動作時の値であり 両チャンネル出力時は 30W 強を測定しました。カタログ値である能力が確認でき正常動作と判断できます。

このプッシュプルアンプの場合は写真のごとく10dB以上のNFBがかけられられていますので 歪部分がはっきり投影されます。シングルアンプですとここまでくっきりした波形は観測できません。歪部分がぼやけています。無帰還アンプではソフトディストーションであるともいわれます。
歪率を5%とすれば最大出力値は増加します。

正弦波出力オーディオジェネレーターは低歪率の AH979G を使用します。

方形波入力によるテスト


TRIO AG-202A CRオシレーター
100Hz,1000Hz10000Hz方形波を入力します。 正弦波で 約1~2W 出力時の波形を設定します。最大出力の 約1/10~1/20 前後の出力波形で方形波に切り替え チェックしました。各周波数測定波形においてリンギング、サグ、オーバーシュート等の波形が目立つほど観測されず NFB 回路定数の変更は行っていません。

精密な波形が出力できるオーディオジェネレーターにはパルス波は出力できません。パルス波が送出できる AG-202A を使用します。











SQ-38FD_a  測定波形は出力トランス CRD-5 搭載 出力管 50C-A10


SQ38FD  CRD-5
リンギング 
10KHz方形波 波形の平坦部に周波数の高い波形が重畳された波形で 高域にピークが発生 NFB回路のC,R素子の時定数でNFB量、周波数特性を改善します。又マルチNFBの検討も必要な場合もあります。
出力トランスがOY15-5からCRD-5に変更しましたがNFB素子の値変更は実施しませんでした。比較的安定した変なピークのない高域波形が観測出来ました。


オーバーシュート
10KHz方形波観測でパルス波形が平坦値よりオーバーしてしまう現象で その後はリンギングとなり振動する波形となります。車は急には止まれないと同様にオーバーラップしてしまいます。改善策としては高域にピークが存在しますのでNFB回路C・R素子の時定数を調整する必要があります。




3C33p-p F683 10KHz
別アンプ 3C33p-p 10KHzの波形です。
NFBのご利益により高域特性が改善されています。下図はNFBを施さない裸特性の10KHz方形波の波形です。出力トランスは F683を使用した時の波形です。
NFBを施して目立つリンギング、オーバーシュートは見受けられません。












3C33p-p F683 10KHz
波形のなまり
パルスの立ち上がり、立下りが垂直ではなく傾斜を描く波形の時は 高域特性が劣化しており トランスの周波数特性不良です。トランス結合アンプ、古典アンプ等によく見られる裸特性の波形です。
10KHz方形波の波形が変形し正弦波のように丸くなる波形です。(No NFB 別アンプ 3C33p-pの波形) 数dBのNFBで上図のように改善されます。









SQ38FD  CRD-5
サグ
100Hzの方形波観測でパルス波の平坦部がのこぎりの刃のように角度を持っている場合は低域の周波数特性が悪い場合で トランスコアの容量不足と思います。改善するには容量の大きな周波数特性の良いトランスが必要です。今回小振りの出力トランスに変更しましたが良好な低域特性となっております。









SQ38FD  CRD-5
1000Hz 方形波入力波形

波形の詳細説明については書籍、文献等で確認してください。出力トランスについては コアの材質、コアのボリューム、巻き線構造により大きく特性が変化しますので 良質の余裕ある出力トランスの選定が必要となります。

C,RでNFB量、位相補正回路の細かな調整をしても大きな改善・変化は期待できません。出力トランスの性格と真空管の特性(μ=gm・rp)によるものが大半の要素です。


厳密に申せば部品単体においてもバラツキがあり それに対して細かいCR類の値を変更するべきとは思いますが 完成度は自己満足の領域と思います。安定動作した強度のNFB回路では 細かな調整を実施するか しないかは個人の判断に委ねます。深追いはどつぼにはまります。ご注意を !
又細かな変化を聞き分けが出来る諸先輩のような 良い耳は持っていません。凡人の感覚です。


又容量負荷としてコンデンサーを接続しましたがリンギングは増加しますが異常発振等の不安定な動作はありませんでした。安定したNFB回路となっています。


電圧増幅管の選別、取り付け

修復調整後CDプレーヤーで音楽等を再生しましたが 真空管独特の温かみのある音が再生されました。
 PHONOの動作テストはしましたが 現在はほとんど使用する予定はありません。古いレコード盤をデジタル変換するときぐらいです。まともにスクラッチノイズの発生が少なく 音質の良いレコード盤は現在数多所有していません。

ばらつきの少ない真空管をコントロール部に取り付け ばらつきの多い真空管を PHONOイコライザー部に取り付けしました。LRバランスも数dB以内の範囲であり細かな調整は実施していません。

電圧増幅管の選別及び真空管チェッカーによるgm 測定



残留雑音について

残留雑音についても測定はしますが 静かな環境で能率のよいスピーカーより耳障りがなければ 良とします。
測定条件 : 入力VRを絞りきった位置で測定 
無音時 測定値としては16Ω負荷 1mV以下 A補正なしでの値を目安とする 16Ω負荷が測定値としては一番大くなります。A補正すると数値は良くなります。
半導体アンプに比較して真空管アンプは元々S/N比が悪いアンプです。良くても60dB程度です。80~90dB以上のS/N比を追究される方であれば半導体アンプのご使用をお勧めします。

S/N比・最大出力電力値だけの追求では良質のアンプであるとは思えません。癖のある特性の悪い真空管アンプですが 心地よい音楽鑑賞ができるため この現代でも骨董的な真空管アンプの愛好家が存在します。数としては少ないですがその一人かもしれません。

寄り道の話


6267の違い
保守管として保有している 6267 です。
同じNEC製ですが 工業、通信用、高信頼管は黄色の箱に入っており中には検査員印と検査年月日が記入されています。緑の箱は一般市場流通用で LUX SQ-38FD,MQ-60に搭載し使われている真空管です。管壁か黄色のプリントではありません。

業務用の機器保守管として 黄色の箱が流通していました。
古くから NECは ウエスタンエレクトリック 社と技術提携されて ライセンス製造。 日本電信電話公社(現NTT)の無線設備・有線電話設備、局内設備などにNECの真空管が多数納品されていました。官公庁御用達品です。自衛隊の無線機に使用される真空管も同様です。黄色の箱ではなく 米軍と同様の白箱(軍箱)に入って納品されました。管壁には通信用とプリントされています。おまけに桜マークまでプリントされています。
印刷されているフォントはウエスタンエレクトリック(WE)と同様です。
今回修復した SQ-38FD_c には高信頼管の保管品が2本しかなく 使用を差し控えたため 欧州製 EF86 を使用しています。

SQ-38FD 回路図


AC(交流)バランス調整

6A-Q8 のプレート負荷抵抗の片側にはリークムラード位相反転回路独特の交流バランス調整用半固定抵抗器がありますが 歪率計がないと正確な調整はできません。オシロスコープでも可能と思いますが真空管を交換しない限り調整はしないほうがいいです。測定器なしの感でされる場合10KΩの中間で大まかには動作します。歪率計を使用して調整する場合は 1000Hz を入力し最大出力の1/10値の時にSVRで歪率が最小となるように調整します。1W出力程度の出力で調整します。

2現象オシロスコープを使ってのACバランス調整


交換に使用した 6A-Q8
ACバランス調整
オシロスコープで調整するには 2現象以上のオシロスコープが必要です。片チャンネルに基準1000Hzの正弦波を入力。もう片方のチャンネルには測定するアンプを通過した信号(正弦波)を入力します。どちらのチャンネルも波形が同じ波高値となるように調整して 測定モードを ADD(加算モード)とするとオシロ画面に現れる複雑な波形が最小となるようにSVRを調整します。測定するチャンネルと基準信号チャンネルの波形位相が逆相でないとうまく動作しません。加算することにより エラー信号分だけがオシロ画面上に映し出されます。同相であれば波高値が大きくなります。両チャンネルとも歪が同じで 波高値が同じであればエラー信号として出力されません。横一線の画像となります。

この調整を理解するため実測する前にオーディオジェネレーターからの正弦波信号を ch-1,ch-2 に並列に入力し歪波形を実感してください。歪を実験する場合片チャンネルの入力波形を小さくすると歪としてブラウン管上に表示されます。
(垂直感度切り替えスイッチにあるVRは通常CALの位置で測定しますが このVRを調整することにより観察波形を任意に小さくできます)
通常の2現象オシロスコープでは ch-2 にある 感度切り替え 調整つまみには PULLモード  つまみを引き上げると位相が逆転する INVERT モードが搭載されています。この操作で加算(ADD)が減算と変化しますので 波形の歪んだ成分だけが画面上に現れます。この機能をうまく使う事により簡単に ch-2 だけが 位相反転するので波形を観測することによりACバランス調整が可能となります。
オシロスコープの違いにより操作方法が違う機種もあります。入力信号をINV(逆相)モードに切り替えるには各メーカーからの取扱説明書を確認ください。このオシロスコープではch-2のPOSITIONつまみで切り替えできます。
上記オシロスコープの画像は2現象モードALTポジションでの撮影です。上部波形は ch-1 下部波形は ch-2 です。ch-2 に入力した波形が位相が反転した状態です。 この波形の状態からADD モードとすると歪成分だけが画面に投影されます。周波数は1000Hz 正弦波信号です。又アンプの回路構成により逆相で出力する場合もあり その時にはINVモードにしなくてよい場合もあります。



基準正弦波と比較して違い分を検出し 出力した値を  率(%)として表すのが歪率計の動作原理です。細かな測定の調整をしなくて良い機能の測定器が Automatic Distortion Meter です。(自動歪率計 目黒  MAK-6571A)
ただしこの測定器では400Hz,1000Hzの歪率しか測定ができません。テープデッキなどの修復作業では400Hz,1000Hzを使用して調整をしますので操作が簡単であり重宝しています。よく真空管アンプでの測定データーでは 100Hz,1000Hz,10KHzでの各種出力電力での歪率グラフが掲載されています。このような測定をする場合は操作に手間取りますが下記に画像を記載している シバソク AH979G 連動歪率計を使用して20Hz~20KHz間任意でのの周波数で測定できるため愛用しています。

歪率計を使ったACバランス調整作業


1W出力時の歪率測定


1000Hz 正弦波を入力
 1W  出力時 歪率計の表示が最小となるように 6A-Q8 プレート抵抗の片側についている 10KΩの半固定抵抗を調整します。

左メーター レペル表示
10V レンジで 4Vrms
負荷インピーダンス 16Ω
上記データーより出力は 1W
歪率 0.04%

各チャンネル歪率を最小に調整

SQ-38FD_b においては 6A-Q8 がgmチェッカーにより指定値より大きく下回っていたため2本とも新品の TUNGSRAM (ハンガリー) 製に交換しました。

この測定結果から 1W出力時 1000Hz では歪率が0.04%が確認できましたので 真空管アンプとしては非常に優秀な特性です。ほとんどの場合家庭用であればスピーカーの能率が90dB以上であれば 1W出力時の音量は大きな音量です。通常1W以下で動作していると思います。ただ突然大きな信号の時にこのアンプであれば歪が発生しないため良い音で稼働するアンプであると判断できます。

スピーカー端子の変更
SQ-38FD_c については入手時真空管全数とOPTが抜き取られていましたので同様に電圧増幅管は松下製の真空管を搭載しACバランス調整を実施しています。ACバランス調整用10KΩの半固定抵抗は新品と交換しました。プリアンプ部についても手持在庫品から松下製をDELICA 1001で選別後搭載しています。メインアンプ部の6267は欧州製シールド電極(I.S 2,7ピン)がメッシュ状のEF86を搭載しました。ただ50C-A10 は手持ち分を搭載したため保守管がのこり少なくななりました。今後のメンテナンスに支障が発生する可能性があります。悩みの種です。その場合 SQ-38FD_b と同様に出力管変更をしなければなりませんが ヒータートランスのひも付きが多少のネックです。今更中古管50C-A10を購入には躊躇します。
入手時スピーカー接続ターミナルの取り付けねじが3本欠品でしたので 今回違うターミナルに交換しました。SQ-38FD用のスピーカー接続端子は使い勝手が悪く新しく端子を工作です。しかし使用するターミナルの選択を慎重にしないと内部は相当混雑しており 端子の形状が問題です。今回比較的安価なジョンソンターミナルを使用したため突起物があり取りつけに苦労しました。従来からある陸軍ターミナルがよいかもしれません。諸先輩がよく使用する高級なターミナルはスペースの関係上加工が大変です。端子を取り付ける基台はエポキシガラス基板を手加工しました。
このSQ-38FD_c がリアーパネルに錆が発生しておらず フロントパネルも傷がありません。ただウッドケースが打痕・木目ムラがあり修復しましたが難点です。


おかげさまで SQ-38FD_c が一番オリジナルと変わらない容姿に完成しましたが ただスピーカー接続端子が変更となっており 使い勝手は元よりは良いと思います。


まとめ 能書きをたれます

特性ばかりを追求される方であれば 高級半導体アンプと能率の悪い小さなエンクロージャー・スピーカーシステムの組み合わせを おすすめいたします。
アンプ特性が良好であり 間違いなく高級な半導体アンプほど癖のない素直な音です。
自己信念の無い方は 評論家の先生(教祖様)の言われることを信じましょう。
1m数千円のスピーカーケーブルは音が良くなると言われます。
小生にはその違いがわかりません。真空管アンプは電圧駆動です。
どのような年齢でどのような耳を持ち 聞き分けることができる先生でしょうか? 知りたいです。
自分の耳で聞こえる周波数特性をオーディオジェネレーターで測定してはいかがでしょうか? たぶん10000Hz(10KHz)以上の音は年寄りになればなるほど聞こえないと思います。
このように耳の特性が劣っている状態である一部の年より評論家(教祖様)どもが悪評を放っています。
グラフィックイコライザーの多用、ハイパワー半導体アンプ、極太スピーカーケーブル、能率の悪いスピーカーシステム、BOSEなどのスーパーウーハーの使用。
能率の悪いスピーカーであってもパワーで押し切ればそこそこ聴きやすい音とはなります。
現代の音楽は電気楽器の音ばかりで PA屋、ミキサー屋が音を作り 編集された音楽がほとんどです。電気楽器は電気がなければただの箱です。
大半の方々が現在販売されている普及品から高級品機器で満足され 音楽を聞いておられます。
数多くのオーディオ機器を聞き比べができる販売店が少なくなりました。
展示されているのは半導体アンプとホームシアター用スピーカーが殆どです。
以前のような JBL,Altec,,Tannoy などの能率の良い大型スピーカーはほとんど見当たりません。特に真空管アンプで聞き比べができるお店は限られます。

38(604-8H)と六半(P-610A,BTS)との違い 
以前岐阜に単身赴任中 名古屋大須に遊びに行ったとき オーディオショップに憧れであったJBL,ALTECのラッパが店頭正面に鎮座していました。
店頭で SQ-38FD と 612J MONITORJBL4344,4350での組み合わせでCDからの音楽を聴き懐と相談の結果ALTECラッパ購入となりました。店頭では38FDが商品として19万円の値札がついていました。仕入れ原価 ? 円でしょうか。 38FDは修復できますがスピーカーを工作できる能力・技術力はありません。


飛んで火にいる・・・……状態です。

現在ではALTECの会社は存在しません。ALTECの血を引く会社は存在します。スピーカーの一部はEV(Electro-Voice)Plantronics to Acquire Altec Lansing 移管しました。ALTEC新品の能率のよいラッパを購入したくとも現在購入できません。購入後判明したのは小音量の夜間リスニングは不向きです。やはり夜間はシングルコーンのロクハンがベストです。能率のよい90dBを超えるスピーカーユニットを搭載したスピーカーシステムは見当たりません。初期に使用していた P-610A(BTS) が 7~8年でスポンジエッジが破損し 現在天然セーム皮4分割品を使用して修復しました。 シングルコーンスピーカーとして活用しています。帯域は広くはありませんが真空管アンプでは夜間のリスニングでは 3W前後の出力があれば十分活用できます。音量を上げてのリスニングの場合はDCD-3500G とアナログ音源X-10R 再生での真空管アンプ 38FD と 38同軸ユニットが威力を発揮します。
店頭でスピーカーシステムを検討する場合 自宅での常用音量、アンプ種で視聴されることをお勧めします。自宅では店頭の大音量と違い異次元の音質となってしまいます。極小さい音量の場合大型スピーカーシステムですら安価なトランジスターラジオに似通った音しか出ません。使用目的に適した機器を使うことです。
BOSEの小型スピーカーとアクティマス(「Acoustimass)バスなどの組み合わせでは小音量でも高域及び低域でも迫力のある音を再生します。よくシステム内部を観察するとアンプ側でBOSE独自のイコライジングをしての音出しです。古くから販売されている802とか101MMなどでも専用のイコライザーが使用されます。
能率のよい大型スピーカーシステムは 日本の住宅に多い4畳半程度の部屋では620B,612J,JBL4350,4344 などを収容は無理のように思います。道楽部屋としての防音効果のある大きな部屋が必要となりますが 金銭的に余裕のある方はどれだけおられるでしょうか。

時代の流れでしょうか。I,Pod・多機能携帯電話機・スマホ・タブレット端末など ヘッドホンステレオで満足されている若者には骨董品のオーディオと音の比較視聴する機会がありません。これでは衰退を待つばかりです。若者は電気楽器演奏の大きなコンサートで Kw出力PA装置 大音量の音に慣れているようです。大きな音圧の影響でで神経が麻痺します。数名の伴奏者で事が足ります。10数名のバイオリン演奏が一台のキーボードで似通った音を演奏します。フルオーケストラに比較して人件費が安価です。現代は電気あっての社会。電気なければ何もできません。情報も音楽もただのゴミとなります。電気代は人件費よりローコストです。

複合機能の歪率計 SHIBASOKU AH979G DISTORTION METER/OSCILATOR

小生は諸先輩、評論家先生と敬われている人のような細かい違いを聞き分ける良い耳は持っていません。凡人です。
近年アコースティックな音楽は少なくなりました。ヒットした映画においても音楽はフルオーケストラの演奏です。電気楽器の音ではありません。電気楽器が悪いとは一概に思いませんが。
現在のシンガーはほとんどがPAを使い 口先だけと電気楽器演奏の音楽が大半です。自分の体を共鳴体として活用していません。特に近年話題となった アナ雪 日本語歌唱  "Let it Go" のシンガー ** は口先の歌唱でブレスが耳につきます。声量がない証拠です。まだ松本幸四郎の娘のほうがプロ歌手とは異なりますが歌唱には無理がなく安心して聞くことができます。
録音風景で 多くはスプリングで釣られた AT,AKG のマイクロホンの前に金魚すくいの網みがあります。ネットはパンストの生地です。いかに口先だけで歌唱しているか。声量がないか。ブレスが下手か。音痴 ?。おまけにSONYの密閉型ヘッドホーンで伴奏を聴いて、歌っての録音です。演奏、歌唱は同時進行と違い隔離室内でのデジタルマルチチャンネル録音です。デジタル編集すると本人もびっくりする歌唱となります。これが録音のマジック・技術です。騙されてはなりません。
生放送などで聞くとデジタルミキサーとデジタルエコー装置と SM-58・パナのワイヤーレスマイク を使いマイクをかじって ・お・ん・て・い・く・る・っ・て・る・・・・ イメージダウンしました。CDレコードと比較すると大違い。パナのワイヤレスマイクは出力が10mWを超えますので無線局扱いとなります。自前のマイクを持参するシンガーも存在します。
音程も狂わずアカペラで1000人以上収容できるホールであっても PAなしで歌えるシンガーが少なくなりました。年間では数回ホールまで生を聞きに行きますがほとんど少人数編成のバンド演奏で電気楽器の音です。アコースティックの楽器であってもマイクを通じミキシングされています。音場の定位がありません。演奏者と音場が一致しません。目視による位置が違和感を感じます。自前のスピーカー・ミキサー・大出力半導体アンプの持ち込みです。おまけにスモークを焚いているため気分が悪くなります。このように感じているのは小生だけでしょうか ?
一度はウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを生で聴きたいと思いますが 費用面もあり実現できません。某国営放送の元旦ウィーンからの衛星生中継を楽しみにしています。さすがはプロフェッショナルな違和感のない優れた演奏です。国内二流、三流バンドでは時々ミス演奏をします。すぐにハーモニー違和感として判別できます。高校生の全国大会に出場する様なブラスバンドの演奏は優秀です。国内でプロではあるが下手なジャズバンド演奏よりは上手です。毎日同じ曲を繰り返し練習しています。

真空管アンプはクセのある音を現在でも演出してくれます。
真空管回路の特性は半導体アンプに比較して古典芸能ですので悪いです。
しかし温かみのある音で動作してくれます。
能率の良いスピーカーと 数w出力真空管アンプの組み合わせでも 心地よい音を再生してくれます。
今も 真空管アンプにはまっています。時には半導体アンプも省エネであり捨てがたく色々模索しながら工作をしています。

骨董品のアナログ機器、音源以外に現在のPC・デジタル機器デジタル音源も活用しますと結構楽しめます。生録CDフォーマットでICステレオレコーダー単三型エネループ充電池1本を使って10時間ほど動作します。2TR38 の時代に比較し肉体的にも生録が楽になりました。内蔵ステレオECM(エレクトレット・コンデンサー・マイク)でも そこそこの音質で録音ができます。
PCで長時間の再生操作が簡単となり MP3,WMA ファイルでもそこそこの音質です。無精者には快適・便利です。これも電気が豊富にあるからできることです。

年寄りのひがみと思われますが 過去の経験から信念を持って楽しむ

これが道楽です。

道楽の環境により 心地良いお昼寝ができます。
道楽は自己満足の世界です。

道楽は他人に押し付けはご法度です。

**式教祖様(*田 *彦教祖様)などによる マインドコントロール されないように気をつけて 自己信念 を持って楽しみましょう。


掲載内容が多少参考になりましたでしょうか。愚痴をこぼしました。

古典芸能である真空管アンプの復活と同類項の増殖を希望いたします。

道楽とは この道を楽しむ事です。

精密測定用 ADVANTEST R6551 DEGITAL MULTIMETER


参考資料等については 無銭庵 仙人 プロフィールまで


改修作業については自己責任でお願いします
 
記載した調整・修理内容は個人的な解釈を記述しています。自己責任での修復作業内容です。製造メーカーからのSQ-38FD調整マニュアルではありません。使用している部品の各メーカーから公表している規格表(スペック)などから 動作原理・理論・過去からの経験に基づいて説明しています。参考程度の説明と解釈ください。参考文献はありますがここまでの説明は記載されておりません。40数年前に組み立てたKMQ-60のメーカーからの組み立て・調整マニュアルを参考として解釈・説明しています。誤記載・誤解釈も多々含まれていると思います。


無銭庵 仙人の 独り言


SQ-38FDは現役システムとして修復・蘇生して動作しています。PCからのD/A出力音源、骨董品アナログLPレコード演奏、CDディスクの再生音源 IC(ポータブル,PCM)レコーダーからの音源が 今回修復した38のアンプが 38同軸のスピーカーを軽快に鳴らしています。長い期間お蔵入りしていました 4Tr 19cm/sのオープンリールテープデッキ(TEAC X-10R)も現役復活しました。SQ-38FDと同様に現在でも通用する初期性能を検証するために部品取り・比較用として不動品を複数台オークションで入手しました。それらの機器も修復に時間がかかりましたがその結果全数正常に動き出しました。足の踏み場所がありません。深追いの結果です。特性の良好な10号(inch)メタルリール仕様の生テープ入手に苦慮しています。

別室で稼働している SQ-38FD-a


Luxman SQ-38FDは諸先輩方が述べられているように 真空管アンプとしてはコンパクトに組まれているため 内部温度上昇が懸念される !! 今回終段出力管変更の結果 SQ-38FD-b は  6C-A7 三極管接続で動作としたため オリジナルより軽い運転動作に仕上がりました。真空管動作はスクリーングリッド電圧がほぼ最大値ですがアイドリング電流調整によりプレート損失、スクリーングリッド損失共最大定格より控えめとなりました。小生の主観としては三極管にこだわりを持っています。現在純粋な3極管は数少なく大きな出力は期待できません。多極管の三極管接続となっており 有名な初期 Luxmam SQ-38 NEC 6A-R8 も多極管の三極管接続です。フランス製三極管 R120 を 2A3 同等で使いましたが内部は四極管の三極管接続構造です。三極管の音色が心地よい........  そのためあえて道楽 で個人的主観により三極管にこだわりがあります。ただ直熱管はS/N比が悪く敬遠します。自作アンプよりはデザイン性の優れた特性のよいメーカー製量産品アンプを修復するのも道楽におけるこだわりです。諸先輩設計自作アンプでは鈴蘭堂(現在はタカチに吸収)のシャーシーばかりで同じような顔をしています。オリジナル性がありません。又は奇抜な真空管が鳥かごで動作しているデザインのガレージメーカー製のアンプばかりです。シャーシーまで自作する方は少ないと思います。組み立てキット導入よりは多少加工技術と知識が必要ですが メーカー製骨董品機器の修復をして初期性能が出ているか検証するのも面白いものです。そのアナログ全盛時代の音質で鑑賞できます。好みもありますが現代のデジタル全盛にはない音質です。
 
RCA 3C33 双三極管構造


通信用パルス増幅管です  RCA   JAN CRC-3C33  アメリカ軍用の箱に収まっています。保守管として保管中です。
純粋の三極電力増幅管で 傍熱型12Vのヒーター仕様 単管で P-P のアンプが作成できます。10W前後の出力で動作します。ソケットは専用のタイト製 もしくは ジョンソン・ソケット が必要です。2A3 p-pに類似のアンプに仕上がりました。
片ユニットプレート損失 15W グリッドはプラス領域までドライブ可能、 最大プレート電圧 600V  軍用真空管であり無理がきくと思われます。
VHF送信管で電力増幅双ビーム出力菅 829B(2B29) と似通った形状です。ヒーター・カソードも同じ物を使用していると思います。プレートにはプレート損失を向上するため放熱翼が付加されており タフな業務用真空管の作りです。

RCA 3C33 832A 829B
先輩方の設計で動作させた場合 自己バイアスでカソードに発生した電圧を分圧し グリッドに正電圧バイアスを与えて各ユニットのプレート電流を制御(DCバランス調整)する方法では 電流が増加すると グリッド電圧もプラス方向に上昇してしまい G-K間のバイアスが浅くなり電流を増やす方向となるため プレートが赤熱する結果となってしまいました。(正電圧を使ったDCバランスのバイアス調整) 参考回路は ウイリアムソンアンプ のカソードバイアス、DCバランス調整回路です。
ゆえに通常の固定バイアス(フィックスドバイアス)回路が有効でした。両ユニットのカソードが共通で取り出されているため バイアス回路設計に苦労します。
又バイアス回路としてはあまり使用例は少ないですが カソードバイアス(セルフバイアス)においてカソード抵抗で大半以上のバイアス電圧得て アイドリング電流値のバランス調整分を固定バイアスのようにVRでバイアス負電圧を調整する 半固定バイアス(セミフィックスドバイアス)回路の導入も良いと思います。
現在 3C33p-pでは各カソードに測定用10Ωが挿入できないため アイドリング電流測定用として出力トランスの各電源端子(B端子)にY字型電流測定用10Ωを設置し測定します。高電圧回路でのバイアス電流測定となりますので感電事故及び絶縁対策には注意が必要です。小生の場合出力トランスの一次巻線で発生する電圧でのDCバランス調整は トランス巻線にばらつきが多いため使用しません。測定用精密抵抗を追加取り付けします。いろいろ模索しましたが固定バイアスで動作しています。A級動作に近い AB1級動作としました。1~2W出力程度であれはA級動作範囲です。

この真空管はコントロールグリッドをB級のプラス領域までドライブすることは可能です。その場合グリッド抵抗値は30KΩ以下にします。グリッドをプラス領域までドライブしないでグリッド電流を流さない場合 グリッドリーク抵抗値は500KΩ以下となっていました。出力トランスのプライマリーインピーダンス値を変更して アイドリング電流を絞りプレート電圧を上げてパワードライブ(コントロールグリッドに正電圧を加えIg電流を流す) AB2,B級とすれば大出力アンプが作成できると思います。ただ歪が多くなる傾向ですので 動作点の設計には注意してください。

A級またはAB1級動作 10W出力 前後で遊ぶのが面白いかもしれません。通常の出力管と違って容姿の異なる面白いアンプが出来上がりました。純粋な三極管プッシュプルアンプとして完成しました。
自作真空管アンプに採用していたタムラ製作所 Fシリーズ標準型出力トランスは現在非常に高額となり 財力がないため新規に購入できません。製造終了とのうわさもあります。骨董品的な古典芸能の道楽・真空管アンプ工作および保守作業はいつまで遊ぶことができるやら・・・・

by musenan sennin

SQ-38FD 電源スィッチ




RCA 3C33 単管プッシュプルステレオアンプ